ブレイド嘘予告 ショートバージョン

 男は、銃を構えた。
 緑の銃身が指し示す先にあるのは、無精髭を生やした長身の影。
「ゴローちゃん……また、どうして」
 緑の鋼に包まれた男と共にあった青年の名。ある時は男の影となり、ある時は男の支えとなった無口な青年だ。
「……先生。やはり、ダメですか」
 その無口な青年が、ぼそりと口を開いた。
 北岡から突きつけられた銃口に怯える様子もなく。
「そりゃそうだよ。僕は『新人類』(オルフェノク)になったんだからさ。もう元には戻れないよ」
 戻る気もないしね。重厚な鎧に似合わぬ軽い声で、男は軽く肩をすくめる。
「そう……ですか」
 軽快に答える男をじっと見据えたまま。青年は片手に提げた鋼の筺をゆっくりと腰に当て、悠然呟く。
 既にダイヤのエースは装填済だ。僅か二つの動作を重ねれば、その力は完成する。
「ならば」
 しゅるしゅると無数のカードが男の腰を疾走し、一条のベルトを創り出した。
『貴方』(アンデッド)を、封印します」
 そして一声。

「……使えねエッ!」
 男は荒々しい声と共に、青い鋼鉄の兜を打ち捨てた。
「須藤っ! 何やってるの!」
 無論、鋼鉄の兜から響く小沢の声も今の男には届くはずもない。
「G3X無しでどう戦おうっていうの!」
「こんなもんが使えるのは、氷川くらいだろうが!」
 そう叫び、須藤は辺りを見回す。
 そこにあるのは大地に倒れ伏した同僚の姿。鋼の鎧を砕かれ、青の中に赤を散らした悲壮な姿だ。
 現代科学の粋を集めた戦闘服も、古代の脅威(グロンギ)には手も足も出ない。
 Gは、その脅威に抗するために作られた装備であるはずなのに。
 中央に一人立つ異形に、傷一つ負わせる事さえ出来ぬ。
「やっぱり……」
 そんな絶望の中。男は静かに呟き、インナースーツのポケットへ無造作に手を突っ込んだ。
「グワンゲ・ギドリヲ!」
 異形はその正体を知っているのか。力強い構えを取り、男の元へと疾走する。
 無敵の異形が、軽く一蹴出来るはずの相手のわずか一挙動に『焦っていた』。
「俺にはこっちだな」
 だが、須藤は慌てない。ゆっくりとポケットから小さなケースを取り出し、すいと腕を伸ばす。
 無惨に転がったG3の赤い瞳に映るのは、それを左手に持った須藤の姿。
 そして瞳に映る男の腰には、こちらの世界には無い物があった。
 ベルトだ。
 G3のバッテリーインジケーターではない。バックル部分の全てが欠けた、ベルトと言うにはあまりに大きく太い不思議なその形。
「ボルキャンサー!」
 叫びと共に大地が割れ爆ぜ、巨大な鋏が異形の姿を押さえ込む。
 須藤は小さなケースを空洞と化したバックルへ叩き込み、続けて絶叫した。

 鈍い音を立て、細身の長身が崩れ落ちた。
「もう……駄目なの」
 その向こう。虚ろに呟くのは、長い髪の少女。
「よせ……やめろ……」
 未だ血の止まらぬ腹を押さえたまま、白衣の男は苦しげに手を伸ばす。
 砕け散った黄金のベントホルダーに、ではない。
 少女の元に、だ。
「これが……私の運命、だから」
 少女が力なく手を上げる。その手に握られているのは、白衣の男がかつて持っていた漆黒の携帯電話。
 スマートブレインより奪われた、オーガフォン。
 帝王のベルトが一部となる、力の源。
「真魚ちゃんっ!」
 翔一の声は既に届かない。
 振り返った真魚の貌に表情は無く、ただ異形(オルフェノク)を示す陰影が浮かぶのみ。
-STANDING BY-
 その細い腕が、いつの間にか巻かれていた腰のベルトにゆるりと伸びる。
「私は女帝。王の后となる……」
 帝王のベルト……否、女帝のベルトが放つ起動音は、絶望の音。
「真魚……ちゃんっ!」

「変身!」
-TURN UP-

「変身ッ!」
-ADD VENT-

「……変身」
-COMPLETE-

仮面ライダーブレイド劇場版
VS Legend of 13th Riders!

“総員、変身せよ”

 前のロングバージョンに対応した、ショート版。劇場での予告に対する、TVCMみたいな感じですな。まあいずれにせよ好き勝手絶頂。

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