フルフルG

 5月7日の何だか良く分からないラオ激闘で、そのフルフルG製作のキーアイテム『アルビノの中落ち』を二つばかり手に入れたシグニさん。
 基本性能はそこそこながら、胴腕腰足の四種を揃えると『回復薬広域化』というスキルが付くこの防具、使い方次第ではなかなかに優秀な装備なわけであります。お洒落でもあるし、ついでにフルセット作れないかと思うようになりました。

 そんなある日、フルフル連戦を募集していたPTに上手くもぐり込み、フルフルと戦える事に。メンバーは主催者氏、実名系のガンナーさんとその友人の剣士さん、そしてシグニさんの四人。

「んー。フルフルありませんね」
 しかし、どうやらその時はフルフル討伐の依頼が来ていなかったようです。毎日多くの依頼が飛び込んでくるギルドですが、そうそう毎日同じ依頼が来るとは限りません。
「だったら、何か適当なの行きません? クックでもいいし」
 そんなときのハンターの対応も慣れたもの。戦った事のない局面を経験して自らの見識を増やすなり、弱めの飛竜と戦って懐を暖めるなりと相場は決まっています。
「じゃ、私がこなしてない依頼でも構いませんか? イーオスを倒す依頼が溜っているので」
 通常のフルフルならまだしも、より凶暴な高位フルフルの討伐依頼ともなれば、相当の手練れでなければオファーすら届きません。
 今回は主催者さんしかそのランクに達していなかったため、シグニさん達は『連れて行って貰う』身分です。それ以上のワガママを言うのは図々しいというものでしょう。
「どぞー」
 特に急ぎの用事もないし、快諾するシグニさんと友人氏。

「ならドスイーオスに行きたい!」

 そこで叫んだのはシグニさんと近いランクの実名系のガンナーさんでした。
 話に聞けば、グラビドG装備を作りたいとの事。グラビドG装備を作るために必要なドスイーオスの皮を剥げる敵とは、彼のランクではまだ戦わせて貰えないのです。
「ドスイーオスは面倒だから、また今度にしな」
 我を通そうとする実名くんを、その友人さんはやんわりとたしなめました。シグニさんもどちらかといえば友人さんに近い心境です。それでなくても、主催者さんは「未消化の依頼をこなしてもいいか?」と提案しているのですから。

 しかし、実名氏は叫びました。
「○○(友人氏の本名)、うるさいよ!」
 流石に、友人さんもその言葉にはカチンと来たようでした。
「……いいよ、もう」
 そのまま依頼から手を引き、街を去ってしまったのです。

 流石に主催者氏も途中で実名氏に「友達に何でそんな事言うの?」と、やんわりとたしなめたのですが、「いつもあんなもんだよ!」と実名氏は取り合う様子がありませんでした。

 そんな感じで気まずい雰囲気のまま三人で依頼をこなし、途中でシデンさんをPTに加えたり実名氏が去っていったりしながら、最終的にはかなりまったりペースで『中落ち』ゲットツアーは終了。
 何となく微妙な思いと、三個の中落ちがシグニさんの手には残りました。前に手に入れたものを加えれば、五つです。

 まあ、いずれにせよ目標数の四個は過ぎています(スキル発動に関係なく、また個人的に似合わないと思っている頭装備を作る気はさらさらありません)。生命の粉塵はもともとストックが有り、モンスターの体液を集める事は毒剣使いの彼女にとって造作もない事です。
 残った唯一の材料。足りない分のフルフルの皮を村の近くで集めながら、そちらも目標数の二十三個を無事揃えるシグニさんでした。

 ……二十二個たまった所でもう一度フルフル討伐に向かったら、一度に八つも手に入ってしまったのはご愛敬ですが。

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