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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

「で、この使い物にならないリーダーは何とかならないのかしら?」
 ハイニがため息混じりの声を上げる。
「何で私に向かってそんな事を聞くのよ?」
 その言葉に冷たく返すセミファス。
「彼を元に戻せるのはあの娘だけでしょう?貴女はあの娘の友達なのだから、何とかして欲しいと思っただけですわ。」
「ラレスは今、ピュウイと一緒にいるわ。」
「ああ、あの色男ですか・・・。」
「あら、よくわかっているじゃない。」
 ハイニの皮肉をこめた物言いに、セミファスも冷たい笑みを浮かべる。二人とも性格上、口調はキツイが喧嘩しあっているわけではない。困っているのである。その原因が・・・壁の片隅でうずくまって、ダークなオーラを発している青年、リィレスである。
 彼はラレスに「大っ嫌い」宣言を受けてから今まで、ずっと気力なく塞ぎこんでいるわけである。小声で何かブツブツつぶやいているみたいだが、セミファスたちには聞こえない。
 とにかくリィレスがこの状態では、作戦の立てようもないわけで・・・。
「もう、しようがありませんから、こちらの殿方をリーダーにして作戦会議を始めましょう。」
 ハイニはそう言ってセミファスの隣りに立っているセンを指さす。
「いいのか?」
「よくないっ!」
 セミファスがぶんぶんと首を振る。
「この人は独断専行の暗殺カメレオンなんだから、リーダーさせたら何し始めるかわかったもんじゃないわ。」
 実際センは、独自でその人形の小さな身体を利用し、マリネを暗殺する計画を立てていたのだ。ただ、もしマリネが死んでしまった場合、果たして元の身体に戻る可能性があるのかどうかわからない為、みんなに却下されたわけだが。
「だったら、この人を何とかしましょうよ・・・。」
 二人は再びリィレスを見つめ、淡い吐息をした。さっきからこんな感じで、時間が無駄に流れているのである。
「リィル兄っ!」
 そんな状況を作ったのも、そんな状況をぶっ壊したのもこの小柄な少女だった。
「ラレス・・・大丈夫なの?」
「大丈夫ってさっき言ったじゃん、セミファス。それより今は、アタシたちが元の姿に戻ることを第一に考えよう、リィル兄。」
「あ、ああ・・・。」
 さっきまでとは全く違うラレスに、リィレスは少なからず度肝を抜かれたが、おかげでいつもの自分を取り戻したようだ。
「・・・今回の作戦は、学校内に『Key Mode』の仕掛けをしようと思う。その為にハイニ嬢と一緒に校内の見取り図など作成していたんだ。」
 そう言ってリィレスは小さな紙を広げる。そこにはフェ・インの地図と何かいろいろな書き込みがされていた。
「キーモード?」
「古代の戦争時代に考案されたミッションのひとつよ。以前何かの本で読んだことがあるわ。」
 セミファスがラレスにあれこれと細かい説明をする。
「ふむふむ・・・それって何か面白そうなミッションだねぇ。」
「面白いと思う人と、そう思わない人に分かれるわね。あたしはこういうの好きなのだけど・・・マリネは苦手かもね。だから賛成したんだけど。」
 ハイニはそう言って悪戯な笑みを浮かべる。
「了解っ。じゃあ、夜まで時間ないから早く準備しちゃおうっ。」
 さっきまで落ち込んでいたとは思えないラレスの行動力に、唖然とする一同。
「あの・・・ラス・・・。」
 ラレスは背後からかけられた声に、振り向かずに答える。
「全ては終わってからにしようよ・・・。アタシはただ、作戦の成功を優先にしたいだけなんだから・・・。」
「ああ・・・そうだな・・・。」
 リィレスの声に、力はなかった。


つづく

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