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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

「知って・・・いたのですか・・・?」
 ラレスの一言には、さすがのピュウイも絶句するしかなかった。
「アタシたちは生まれた時からずっと一緒だったんだよ。隠し事なんて・・・できないよ。」
「何時頃、気がついたのですか?」
「うーん・・・リィル兄にティア・ハートが送られてきて間もなく・・・かな?アタシが『どんなティア・ハート?』って尋ねても答えてくれなかったから・・・隠れてこっそり見ちゃった。」
 ラレスはちょっと苦笑いをして見せる。さすがに兄の秘密を強引に知ろうとしたことは、いけないことだと自覚しているのだろう。
「でも・・・その・・・リィレスさんがラレスさんに自分が闇のティア・ハート使いであることを黙っていたのは、ラレスさんを悲しませたくないからであって・・・。」
 今更、しかも他人であるピュウイが言い訳をしても意味の無いことは分かっているのだが・・・。
「うん、わかっている。」
 ラレスは淡々と返事を返す。
「さっきもピュウイくん言ってたよね。ティア・ハートの属性だけで区別されるほど人間は単純じゃないって。
 闇のティア・ハートを持っているからって、アタシの大好きなリィル兄であることに変わりは無いんだから、嫌いになることなんて絶対に無いのにね。
 あ、絶対ってことは無いか・・・。」
 ラレスはさっきリィレスに投げかけた言葉を思い出した。
「そうですよ。ティア・ハートの属性っていうのは、血液型占いみたいなものです。そういう性格の人が多い・・・かもしれないという思い込みと先入観から出来たもので、統計的にも実証されていない信じるに足らぬものですから・・・。」
「えっ?アタシ、占いは好きだし、結構信じているよ。だからティア・ハートの属性についてもある程度信じてる。
 だから、リィル兄がアタシに闇属性のことを隠していたのは、アタシの為。
 …でも、それは半分の理由だよね。
 多分残りの半分は、自分の為だと思う・・・。」
 ラレスはここで一旦、息をついた。
「だって・・・闇のティア・ハートの属性性格は『利己的』でしょ?だから多分、リィル兄は自分が闇属性ってことで、アタシに嫌われるのが怖いんじゃないか・・・と思うの。それを恐れて、アタシにずっと隠しているんじゃないか・・・って。
 でも、そんなことでアタシはリィル兄のことを嫌いになったりしないよ。もっとアタシのことを信じて欲しいの。
 だからリィル兄がアタシのことを信頼してくれて、更に自分自身にも自信を持ってくれて、いつかアタシに本当のことを言ってくれるまで・・・今はまだ知らない振りをしていよう・・・って思っているんだ。
 あはは、ちょっと自意識過剰過ぎたかな・・・?」
「いや・・・。」
 ピュウイは驚きで、そう発するのが精一杯だった。いつも明るく無邪気で、まっすぐなラレスが、そこまで兄のことを理解し、自己分析をし、葛藤していたとは・・・。
「…だったら、そこまでリィレスさんに信じてもらいたかったら、ラレスさんもリィレスさんを信じてあげないとね。」
「・・・うん。」
 ラレスは俯きながらも頷く。
「ああ、今まで黙ってたこと話したらすっきりしちゃった。聞いてくれてありがとう。これで吹っ切れた感じがするよ。」
 ラレスが立ち上がったので、ピュウイもすぐに腰を上げる。
「じゃあ・・・。」
 しかし今度彼女は首を振る。
「今はただ、マリネさんとの戦いに集中するってこと。今、リィル兄にハィニさんの事を聞いて、戦う前から凹みたくないもん。そのことは全てが終わった後・・・。
 だから、みんなの所に戻って作戦会議しよう。」
「そうですね。」
 駆け出すラレスの後ろ姿を眺めながら、ピュウイは考える。やっぱりラレスさんは強い、それに立ち直りも早い。これがもし逆の立場だったら・・・果たしてどうだろう・・・。
『アタシがリィル兄を守ってあげる。』
 その言葉が、現実になってもおかしくはないことをピュウイは感じていた。
「あ、そうそう・・・。」
 ラレスが急ターンしてピュウイの元に戻ってきた。
「さっきの話、みんなには絶対に内緒だからね?特にリィル兄には。」
「もちろん。せっかくの二人だけの秘密ですからね。誰にも話しませんよ。」
「約束だよ。」
 ラレスは小指をさし出す。つられてピュウイも彼女の小指に小指を絡めた。
『♪指きりげんまん嘘ついたら・・・』


つづく

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