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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

(4)
「はぁ・・・えっと・・・。」
 いきなりのことで、言葉を失うラレス。当たり前だろう。ピュウイの言葉は、告白と言っても変わりがないものだから。
「ピュウイくん・・・そういう台詞が簡単に出てきちゃうから、風のティア・ハート使いと思われちゃうんだよ?」
 ラレスはその言葉を理解する為に、それはピュウイがいろんな女の子に話している冗談のひとつと受け止めたらしい。
「僕は光のティア・ハート使いです。本当に好きな人にしか、恋人になりたいなんて言いません。
 それに人間はティア・ハートの属性で決められるほど、単純な生き物ではありませんから。
 ・・・光のティア・ハートを持っているからといって、全ての人間が純真な善人ではありませんし、闇のティア・ハートを持っているからといって・・・。」
 その言葉の続きを、ラレスの声がかぶさる。
「全員が悪人ではない・・・ってことだよね。センさんや・・・リィル兄のように・・・。」
 
「あーん、返すのだーっ!」
 じたばたと暴れているエルマを片手に掴み、楽しそうにエイスの手から逃れるティシャ。天人である彼女を捕まえるのは、エイスでも至難の業だろう。
「ほーれ、ザン、ぱーすっ。」
 エルマがくるくると宙を回転して、ぽふっとザンの手の中に収まる。
「ザンさん、儂の神様を返して欲しいのだ。」
 エイスはザンからエルマを取り返そうと、ぴょんぴょんと飛び跳ねるが、小柄のエイスにとって長身のザンは文字通り見上げる存在であり、更にエルマを掴んだ両手は頭より上に掲げているので、どうジャンプしても届かない高さとなっていた。
「・・・神様?」
「そうなのだ。儂の進む道標や話し相手になってくれる、大事な神様なのだ。」
 必死なエイスを見て、ザンは無言で腕を下ろす。エルマは必死でザンの手から抜け出すと、エイスに飛びつく。
「神様っ!」
「むぎゅ・・・そんなに強く締めるなだべ・・・。」
 エルマを自分の胸の中でぎゅっと抱きしめるエイス。
「あらら、もう少し遊んでいたかったのに。」
 ちょっと不満そうなティシャだったが、
「わたしたちにとっては興味深い人形でも、エイスにとっては大事なお友達なのよ。それをモノ扱いするのは、やっぱりよくないことよ。」
 というザンの言葉に、「は〜い。」と素直に引き下がった。
「でも、その代わり今夜の決闘は見物させてもらうわよ。」
「うう・・・やっぱり・・・夜の決闘にはついてくるのだな・・・。」
「それは当たり前です。」
 ザンの有無を言わせない笑顔が、エイスの否定的意見を全て飲み込ませてしまった。さすがのザンもその件ばかりは一歩も譲歩しないみたいだ。
「さ、今夜は楽しくなりそうだから、さっさとご飯食べてお風呂入って寝ちゃおう。今日は機嫌がいいから、お姉さんが晩御飯奢ってあげちゃうわよ。」
 はしゃぐティシャの隣りで、どうやってこの二人のことをハイニたちに説明しようか・・・と悩むエイスの姿があった。
 そんな対照的な二人を、ザンは遠くからにこにこと眺めているだけだった。
 ・・・いいコンビである。

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