-目次へ-

ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

「なるほど・・・それは楽しそうですね・・・。」
 エイスの説明を聞き、ザンの瞳が妖しく光ったのを見て、エイスはしまった・・・と感じたが後の祭りだ。
「詳しく、教えて貰いましょうか。」
 口調は穏やかだが、その語感には抗えない何かがあった。天人としての有り余る魔力を制御しきれていないのか、常時地面から足が浮いた状態で、更に長い髪の毛も重力に反してうねうねとあらぬ方向に動いている。それは、エイスでなくても威圧されてしまう光景だろう。
「そなたもそうは思いませんか?」
 ザンは部屋の奥に声をかける。その時点になって、初めてエイスはザンの部屋に先客が来ていた事に気がついた(大学の寮は基本的に個室が用意されているため、ルームメイトは居ない)。つまり、今までの話を全て聞かれてしまった・・・ということだ。
「そうね。なかなか興味のある事柄じゃない?」
 奥からそんな声が返ってきた。女性の声だから彼氏の類ではないのだろう。だからといって、ザンが自分の部屋に上げるような親友が、高等部時代にいたとは思えなかったけど・・・。
「と・・・とりあえずお客さんが居るようなので失礼するのだっ!」
 これ以上、この決闘の関係者(というかギャラリー)を増やす面倒はしたくない。そう即座に考えたエイスは、身体を180°回転させ、急いで玄関から逃げようとする。
「あら、そんな面白そうな話をするだけして逃げるなんて、つれないわよ。」
 瞬きの間に、ドアの前には見ず知らずの女性が立ちはだかっていた。たぶんザンより年上のようなのだが、姿格好は彼女より若々しい・・・というか幼い。声からして、たぶん今奥に居た女性だろう。その彼女が今、一瞬にしてエイスよりも早く扉の前に移動したのである。そのスピード・・・彼女は風のティア・ハート使いなのだろうか?そしてザンと同じく、その華奢な身体からは想像も出来ないほどに発せられた瞬間の膨大な魔力・・・エイスにも容易に気がつく。彼女も・・・天人だ・・・。
 後ろを見れば、相変わらずザンがいる。前門の虎、後門の狼・・・二人の天人挟まれては、さすがのエイスも勝ち目がない。
「うう、わかったのだ・・・。子細を話すのだ・・・。」
「そうそう、女の子は素直な方が可愛いわよ。」
 がっくりと落したエイスの肩を、彼女はポンポンと叩く。
「あ、そういえば私の自己紹介がまだだったわね。私の名前はティスシアナ・アレル。ティシャって呼んでね。今はフェ・インの大学院で学士(研究生)をやっているわ。
 で、研究対象はこの娘(と、ザンを指さす)と空魔法と空のティア・ハートなのよねー。
 よろしくね、エイスちゃん。あと、背中に張り付いているお魚さんもね。」
 エイスが慌てて背中に手を伸ばしたときにはもう、ティシャの右手には、ジタバタした人形のエルマが捕まえられていた。
「プリンセスガード同士の決闘に加えて、この意思を持ったヌイグルミ・・・。いろいろ、調べなくちゃいけないことが増えたみたいね♪」


つづく

-戻る-
-進む-
-目次へ-