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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

「僕が・・・ラレスさんの゜お兄さんですか・・・?」
「うん。だって、センさんや虎仮面さんはどちらかというとアタシが守ってもらうような感じだし、エルマくんはお兄さんというより友達って感じだし、セミファスは女の子だし、サモナんはセミファスに守られているしね。
 ピュウイくんは年上だし、歌も楽器も上手いし、優しいし・・・。」
 ラレスは何かを思い出すように中空を見つめる。
「この前、アタシたちの性別が逆転しちゃった時あったでしょ(第四話参照)?
 あの時、女の子になったピュウイくんが凄く可愛かった。あんな風になりたいってアタシいつも思ってたから・・・。
 だからアタシが男の子になった時、そんな儚げなピュウイくんを守りたい!って思ったの。」
(結局・・・最後は守ってもらっちゃったんだけどね・・・。)
 と、小さくつぶやく。ラレスは気を失う寸前、覚醒したピュウイの姿を見ていたのだ。ただ、その小さな声はピュウイには伝わらなかったし、もし聞こえたとしても、その時の記憶を失っている彼には、そのラレスの独り言の意味は理解できなかっただろう。
「それは・・・男として喜んでいいのかなぁ・・・。」
 ピュウイはちょっと苦笑いをするが、すぐに真面目な顔になる。
「でも・・・僕はラレスさんのお兄さんにはなれません。それに、その言葉はもう、どんなことがあっても絶対言ってはいけない台詞だと思います・・・。」
「・・・うん。ごめんね・・・。感情のままにあんなこと言っちゃったけど、アタシはリィル兄が一番好きで、ずっとお兄ちゃんでいて欲しい・・・。」
「じゃあ、戻ってリィレスさんと仲直りしましょうよ。」
「・・・。」
 再びラレスは黙ってうつむいてしまう。
「ハイニさんは・・・美人ですよね・・・。」
 無言の間を嫌ったピュウイが、話題を変える。
「う・・・やっぱピュウイくんもそう思っているんだ・・・?」
「いえいえ、僕は全ての女性は皆美しいと思っていますから、これはラレスさんの視点ですよ。
 あと、さっきセンさんに聞きましたけど、セミファスさんのことも可愛いと思っている。
 そしてありがたいことに、僕の女性化した姿を自分の理想の女性像だと言ってくれました。」
「・・・だから?」
「素直にそう思えることが素晴らしいのですよ。羨望や憧れはいつか目標となり、人は成長していきます。逆にネガティブな思考は、人間の成長を妨げる・・・。
 ラレスさんは、お兄さんを取ったハイニさんを恨んでいますか?」
「そんな・・・ちょっと嫉妬はしていると思うけど・・・恨んでなんかない。」
「じゃあ、可愛いと思っているセミファスさんは?」
「セミファスは大事なお友達だよ。そりゃ、さっきはちょっといろいろ言っちゃったけど・・・嫌いになんかならない・・・。」
「容姿だけではありません。自分で『最強の剣士になる!』って言いながらも、ちゃんと虎仮面さんやセンさん、そしてもちろんリィレスさんの強さを認め、尊敬している。
 そういう心を持つことは、着飾った偽りの装束に身を包んだ人たちより、ずっと美しいと思うんです。」
「つまり、人間は顔よりも心が大事ってこと?」
「そういう陳腐な言葉では伝えきれないのですが・・・ラレスさんは十分美しいし、ラレスさんを好きな人もいます。だから、そんなに卑屈になる必要はないわけで・・・。」
「何か・・・ピュウイくんに美しいって言われても・・・。どうせ他の女の人にも同じことを言っているんでしょ?」
「うーん・・・まいったなぁ・・・。じゃあ僕の今の、いや前から思っていた気持ちを率直に話しますよ。」
 ピュウイは頭を掻きながら、次の言葉をつないでいく。
「さっき、僕は言いましたよね。『僕はラレスさんのお兄さんにはなれない』って。
だけど・・・兄にはなれませんが、他の立場ならなれますよ。
 ・・・というか、なりたいですね。」
「ん?なに?ピュウイくんも大事なお友達だよ?」
 ピュウイは軽く顔を横に振ると、じっとラレスの瞳を見つめる。
「リィレスさんはもちろん『お兄さん』、エルマくんは『男友達』で、セミファスさんは『女友達』。虎仮面さんは『お父さん』でセンさんは『保護者』(?)って感じですよね。
 でも、僕はその中のどれでもない、たった一人の存在になりたいんです。」
「なに・・・?お姉さん・・・?」

「僕は・・・ラレスさんの『恋人』になりたい・・・。」


つづく

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