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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

 人形になってもお腹は減る。それは(当たり前だが)人形になって初めてわかったことだった。
 確かに自由に動くことができる上、何もエネルギーを必要としない永久機関であるのなら、それは強力な特性となる。いくらマリネだって、敵に塩を送るようなことはしまい。
 ・・・そんなわけで、現在エルマ、虎仮面を除くティア・ハーツは、ハィニィが用意してくれた食事を摂っていた。
「ん?・・・何?」
 セミファスの食べる姿を対面でじぃっと見つめているラレス。
「すごい可愛い食べ方・・・。それって家で練習したりするの?」
「えっ・・・。」
「その髪は?」
 ラレスはセミファスのブロンドの髪をすっと撫でる。
「どうやって手入れしたらそんなに綺麗な髪、維持できるの?」
「どうやってって・・・。」
「・・・どうしたら・・・セミファスみたいになれるの・・・?」
「ラレス・・・?」
「セミファスになりたい・・・。
 リィル兄、アタシを大切にしてくれてるってわかってるんだけど・・・結局子供扱いしかしてくれないんだもん。
 ハイニさんと話してるリィル兄、すごく楽しそうだった。ハイニさんも美人でクールで、すごくお似合いだった。アタシ、あんな風になれる訳ないもんっ!」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ。ラレスにはラレスのよさがあるんだから・・・。」
 セミファスが伸ばした手を、ラレスは振り払う。
「セミファスは可愛いもん。アタシの気持ちなんて・・・わかるわけない・・・。」
 後半の言葉はもう、涙声になっていた。
「セミファスは自分のこと可愛いってわかってるから、浮気性の彼氏がいてもそんなに余裕でいられるんだよっ!」
言ってから、後悔した。
「ごめん・・・ごめんね・・・。」
 食事もそこそこに、泣きながらその場から駆け出すラレス。その後姿を呆然と見送るセミファスの後ろで・・・。
「・・・意外だな。あの娘がどれだけ愛されているか、どれだけいい素材を持っているか・・・自分では全く気づいていないのだな・・・。」
「それがラレスのいいところなんですけどね・・・って、センさん今の話ずっと聞いていたんですか!?」
 背後からの声に、思わぬノリツッコミをしてしまったセミファス。
「あれだけ大きな声を上げれば、嫌でも聞こえてくる。」
 そう言われ、慌てて周りを見渡す。が、他には誰もいない。そういえば今夜の作戦のために、現場を下見に行くって言っていた。自分たちは留守番を任されている。
「それに・・・あの兄妹はどちらも危なっかしいからな。見ているこちらが変な心配をしてしまう。」
「あら、嫌俗なセンさんが他人事に積極的な興味を持つなんて、明日は雨でも降らなければいいけど。」
 自分でも嫌味な言い方だと思った。が、センの表情は少しも変わることはない。
「そういうのを含めて、彼女の魅力だと私は思うが。」
「・・・そうね・・・。」
 走り去ったラレスを探そうと立ち上がったセミファスだったが、探す相手は向こうからこちらに走ってきた。
「セミファスっ!」
 ガバっと抱きつく彼女。
「ごめんねごめんね、嫌いにならないでね。セミファスに苛立ちぶつけるなんて、自分のこと大嫌いだよ・・・。」
「大丈夫だから・・・。嫌いになることなんて無いから・・・。」
 セミファスもラレスをぎゅっと抱きしめる。
「・・・と、こういうところが凄く可愛いと女の私は思うのだけれど、男としてはどうなんです?」
「私の意見が男達の総論と思われても困るが・・・。」
 センは言葉を続ける。
「その評価は適正だと思うね。」

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