-目次へ-

ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

「よし、これで完璧だべ。」
 ティア・ハーツと行動を別にしていたエルマは、どこからか拾ってきた鉄棒に、同じくどこからか持って来た銅線を巻き、コイルのようなものを作っていた。
 できた銅線の棒を今度は腰のあたりにとりつける。長い棒は頭の上まで伸びており、こちらの次元における「ラジコン」の「アンテナ」を彷彿とさせた。実際エルマもそのつもりらしい。
「後は人形のように動けば、どこから見ても魔導人形だべ。」
 エルマはそう言いながらギクシャクと歩き始める。右手と右足を同時に出し、ヨタヨタと廊下を横断している途中、
「む!?」
 一人の少女がエルマを見つけて近寄ってくる。
「人形?何でこんなところに・・・?」
 手を伸ばそうとした少女に、エルマは喝を入れる。
「コラっ!オラを誰だと思ってるだっ!?」
「なっ・・・?人形が喋った!?」
「オラはさる方に創られたレプラカントだべっ!今はある人物を探す為、この人形を使ってフェ・インの中を調査しているだ。オメーも手伝ってけろ。」
 少女は驚愕する。意思のある魔導人形など、初めて見たからだ。この学校で最も優秀な人形使いであるアマネ(マリネ)でさえ、意思を持った人形は創れない。
 ・・・となると、この魚の人形を創った人物は余程名高い魔導士に違いない。フェ・インの教授たちかもしれないし、下手をすれば元老院(賢人機関)の老師たちかもしれない。
 どちらにせよ、下手に逆らうのは得策ではない、と彼女は思った。
「わかった、手伝おう。」
 人に媚びるのは好きではないが、可愛いおもちゃの言うことは気にならない。それに先程受けたジェンダの命令より、遥かに楽しそうに少女は感じていた。
「オラはエルマというだが、オメーの名前は何て言うだ?」
 エルマという名前が、ちょっと少女の記憶の片隅を刺激したが、気にせず自分の名前を名乗る。
「儂の名前は・・・。」

「そう言えば・・・。」
 ハィニィのカバンに隠れて校内の下見をしていたリィレスが、思い出したようにハィニィに訊ねる。
「部屋にベッドが二つ、机も二つありました。あの部屋にはもう一人、同居人がいるのですか?」
「ああ、そうね。今は出掛けていたから紹介するのを忘れていましたわ。」
 そう言いながら、ハィニィは少し困った顔をする。
「でも気難しい娘だから、貴方たちのことは口外しないとは思いますけど・・・協力することもないと思いますわ。あまり他人に興味を示さない性格のようですから。
 あ、ごめんなさい。その娘の名前でしたね。彼女の名は・・・。」

『エイス・エイダ。』
 宮廷魔術師リヴ・エイダ(リヴェーダ)の孫娘である。
 そして・・・。
「わかっただ。ではエイス、オラを肩に乗せるだ。この歩幅では移動するのも面倒だべ。」
「了解した。」
 ・・・『エルマのゲボク1号』誕生の瞬間であった・・・。

つづく

-戻る-
-進む-
-目次へ-