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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(前編)

「・・・レス、ラレス・・・。」
「うん・・・。リィル兄・・・?」
 自分を呼ぶ声に、ラレスはゆっくりと意識を取り戻していく。
 うっすらと目を開けた先には・・・大きな犬のヌイグルミが心配そうに彼女を見下ろしていた。
「きゃー、かわいいー、ふわふわのモコモコだぁー。」
 起きたばっかりだというのに、ラレスは元気良く犬のヌイグルミに抱きつく。
「ちょ、ちょっとラレス、待って・・・。」
「あれ?ヌイグルミの中から、リィル兄の声が聞こえる・・・?」
「中からではなく、僕がリィレス自身なのですよ。」
 犬のヌイグルミ姿のリィレスは、困ったように頭を掻く。
「え?何でリィル兄、ヌイグルミになっちゃったの?」
「僕だけではありませんよ。ラレス、自分の身体をもっと良く見てみなさい。」
「えっ?」
 言われてから初めて、ラレスは気づく。自分の肌が何か硬い物質に変わっていることに。
「あ、アタシ、人形になってるんだぁ・・・。」
 ラレスは自分の姿に驚きこそはすれ、パニックに陥ることはなかった。こう短期間の内に子供にされたり、性転換をさせられれば、嫌でもこういうことに耐性はついてしまうものだ。
「おや、ラレスさん気が付きましたね。」
「これで全員揃ったわ。これからどうするか考えましょう。」
 奥には同じく、人形にされたピュウイルとセミファスがいた。
「んだ。人形にされても、こうして喋れたり動けたりするから、さっさとオラたちを人形にした奴をぶちのめすだ。」
 同じく人形(?)にされたエルマが、そう提案する。そんなエルマをじっと見つめるラレス。
「う、エルマくんって、人形というよりも、何か小さい子がお風呂で遊ぶおもちゃみたいな姿だね・・・。」
「よ、余計なお世話だべっ!」
「まぁ、動けて喋れるのは変わりませんが、一番のネックは身体が人形サイズまで小さくなってしまったことですね。」
 ピュウイが話を元に戻す。
「そう言えば・・・ここってどこなの?」
 現在ラレスたちのいる場所は、暗くて狭い空間であった。更に、一定間隔で大きな振動が感じられる。
「マリネっていう、四天王の一人の鞄の中らしいわよ。」
 セミファスがリィレスから聞いた話を、ラレスに話す。この振動は、どうやら彼女が歩いてどこかへ向かっているらしい。
「でも・・・どこに向かっているんだろう・・・?」
「フェ・イン・・・かな・・・。」
 今まで黙っていたセンが、ぽつりとつぶやく。
「周りからいろいろな声が聞こえますから、人が大勢いるところなのでしょう。
 しかし、聞こえてくるのは十代の若い男女の声のみ。だとしたら、ここは街中でも、酒場や食堂でもなく・・・学校ということなのでしょう・・・。」

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