27.リスタート1992
「ここは………」
そこに広がるのは、見渡す限りの田園地帯。
振り返れば、数日を過ごしたはいりの家がある。
「1992年…………」
1992年。
空を見上げれば、日はやや翳り気味に。
どうやら長くて一、二時間。昼食が遅かったから、もしかしたら三十分と経っていないのかもしれなかった。
「どうだった?」
「今のは……夢、なんですか?」
夢にしてはリアルすぎる。周りを見ても呆然としているものばかりという事は……この場にいた全員が、同じ体験をしていたという事なのだろうか。
「まあ……そんな感じかな」
まさか本当に歴史を巻き戻したわけではあるまいが……。
ファファが冬奈にしがみついて泣いていたり、リリがセイルから離れなかったり。そんな様子を見る限り、どうやら本当に『あの世界の体験』はみんなに共通して起きたことらしい。
「で、あたしの力をこのまま使ったら、あんな感じになっちゃうんだけど……どうする?」
明るい口調で問われはしたが、その言葉が意味する事は……先ほどの歪んだ歴史に辿り着くのか、それともどちらかの歴史を切り捨てるのかという非情な三択だ。
彼女たちの歴史を選べば、月瀬とルーナの間に生まれたセイルの存在や、今まで積み上げてきたパートナーとの縁は消えてしまうだろう。
そして自分達の歴史を選べば、柚子やはいり達の運命は彼らの知っている通りになる。
かといって両方を選べば……体験したのは、先ほどの通り。
「それは……」
いや。
この世界に来た時点で、既に結論は出ていたのだ。
ただこの1992年の世界で暮らす柚子達を見て、決意が鈍っただけに過ぎない。
故に……。
「じゃあ、こう考えてよ」
黙ってしまった一同に穏やかな言葉を投げかけたのは、事件の当事者たる大神柚子だ。
「私は……あなた達を助けて、いいのかな?」
その問いに、未来から来た子供達は……。
続劇
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