4.ヴルガリウスの悪夢 「おかしい……」 異変に気付いたのは、誰が最初だったか。 「ロゥ、おかしいよ。こいつら」 迫り来る魔物を片っ端から打ち落としながら、ロゥはハイリガードの言葉に顔をしかめた。 既に何体の魔物を沈めたか記憶にない。百を超える辺りまでは暇つぶしに数えていたのだが、段々面倒になってやめてしまったのだ。 「先輩! こいつら、倒しても倒しても出て来ますよ!」 「当たり前だろう! 魔物戦の基本だぞ!」 通信機からはメルディアの悲鳴とシェティスの怒声が聞こえてきた。 魔物は基本的に、泉から際限無く現れる。だからこそ、どれだけ早く泉を落とせるかが問題になってくるのだ。 だが、それにしても多すぎる。泉から魔物が生まれる量は一定のはずだから、倒せば倒しただけ魔物の数は減るはずなのに。 「シェティス! そっから泉まで、どのくらいある!」 随分離れてしまった銀色の獣機に向けて、怒鳴りつけるロゥ。 「あと50! 一息だ!」 「座標寄越せ! そこまで、もう一撃行く!」 力を振り絞り、ハイリガードの黄金の一撃をもう一発。赤い泉があるとされる場所へと向けて、力任せに叩き込む。 三百ほどの魔物を巻き込み、泉までの道が一気に開かれた。 「な!」 その果てを目にし、ロゥは息を飲んだ。 「バカな!」 シェティスもそれを、否定した。 何もない。 ただ、白に覆われた荒野だけが広がっている。 「術者じゃなくて、泉じゃなかったのかよ!」 「こんなに召喚の早い術者などいるものか! 出現パターンは一つだったのだぞ!」 この規模の魔物の群れを一人で生み出した事だけでも常識を越えているというのに、さらに移動しながら召喚することなどありえない。 「ロゥ! もう力残ってないよ!」 「ちいっ!」 残された力を振り絞り、白い重装獣機は必死の抵抗を開始する。 「……ふむ」 移動を終え、『そいつ』は辺りを見回した。 白、白、白。 見渡す限りの白い色。 その中に一人だけ有る、人の色。 他の赤の後継者と同じ、黒いコートを身にまとった禿頭の巨漢だ。 「もう少し、喚んでおくか」 一人ごちて手を広げ、両腕をぐいと拡げる。 注視すべきは、その掌だろう。 五本の指があり得ない方向、あり得ない長さで曲がり、両手を用いるはずの呪印を片手で形成しているのだ。 それが、両手分。 三対、六本ある。 アルジオーペの展開速度のさらに倍。一瞬で六体、さらに六体、際限なき召喚を続けていく。 ロゥが全力で倒した数を一分ほどで補充しておいて、疲れた様子もない。その程度は負荷にもならぬ、といった所だ。 「その辺にしておけ、ヴルガリウス」 巨漢の名はヴルガリウス。 五人の赤の後継者、最後の一人。 「……フォルミカか」 ぐるりを頭を巡らせば、そこには黒い鎧に身を包んだ細身の男がいる。 「貴公ら、遊びが過ぎるぞ」 「貴公が勤勉過ぎるだけだろう。今回の件は別に、連中を倒すのが目的ではないぞ?」 首を真後ろに向けて苦言を呈す巨漢を軽くいなし、黒鎧の男は腰の剣に手を置いた。 「強い遊撃隊がいる故、少し遊んでくる。貴公も少しは、連中にハンデをくれてやれよ」 フォルミカは重さを感じさせぬ動きでひょいと舞い、白い魔物の外殻へ飛び上がる。 「ふむ。死なぬ程度にな、フォルミカ」 「我が名を忘れたか? 不滅のヴルガリウスよ」 最後に掛けられた声に、フォルミカは嗤いながら即答した。 「我が『無尽』の称号をよ」 メルディアは鋼鉄の弓を引き絞り、ひょうと解き放った。 鋼の弾性を込められた鉄矢は密集していた魔物数匹をまとめて貫いて、そのまま大地に縫い止める。 移動しながら一挙動、片手で数本の弓をまとめて引き抜き、近寄ってきた魔物を近矢の連発で端から仕留めていく。 もはや後方から悠長に援護しているような場合ではないのだ。前後左右、あらゆる場所から魔物は迫ってくる。 「メルディア! 大丈夫かっ!」 通信機から聞こえてくるのはシェティスの声だ。魔物の放つ障気が濃くなっているのか、最初はクリアだった音質も段々ノイズが混じるようになっている。 「大丈夫です!」 そう叫び返し、矢が尽きた事に気付く。 「……大丈夫じゃ、ないかも」 大弓で魔物の攻撃を受け止めて、そのまま力任せに押し返す。もともと打撃武器の強度を持たない弓はそれだけで二つに折れ、武器としての用をなさなくなってしまう。 腰に短剣はあるが、近接戦は得意ではない。 「わあああああああああっ!」 気付けば既に敵は目の前。短剣を抜く暇もなく、迫る魔物を両手で無理に押さえ込んだ。 べき、という鈍い音が機内に響き、両腕が砕けたアラームが鳴り響く。 「やだっ!」 既に回避する事しかできない三式で、必死に後ずさるメルディア。操縦桿が滑り、バランスを崩した所に魔物の追撃が襲いかかった。 「グレシア! ドゥルシラ! 誰かっ!」 背中から倒れた衝撃で正面のハッチが砕け散り、表情のない魔物の貌が姿を見せた。 押し入ってくる硬質の腕が計器を割り、緩衝用のロールバーを無惨に折り砕く。圧倒的な力に鋼の獣機が内側から引き裂かれて……。 「イーファぁっ!」 めきめきという異音に少女の叫びが重なり、 「父様ぁぁぁぁぁぁっ!」 さらに重なるのは、重い旋回音と、破砕音。 「何泣いてんのや、ご主人」 そして、聞き慣れた声。 「……へ?」 伸ばされた手は、幼い頃から慣れ親しんだ、柔らかい手。 「グレ……シア?」 幻かと、思った。 「おまたせ。ご主人」 幻では、ない。 目の前にいるのは魔物ではなく、間違いなく自分の世話役であるグレシアだ。 「カッコ悪いわよ、メルディアったら」 半ば広がる外の光景で見えるのは、見た事もない獣機の姿。優雅に広がる翼を持った、空翔ける人魚の姿。 「イファ、そんな事言わないの!」 「ドゥルシラ……」 人ならぬ姿だというのに、それが理解できた。 そう。イーファの世話役のドゥルシラだ。まだ幼い頃、初めて会った時の姿でそこにいる。 「もう、父様との約束はいいの?」 ぼんやりとした頭で、柔らかくそう問う。 「せや。今は正体隠すより、ご主人やイーちゃんの役に立つ方が大事やからな」 再び頭上を大槍が旋回し、三式に群がろうとした魔物をあっさりと薙ぎ払う。 「そうね……。もし王都が二人を差し出すように言っても、ワタクシが絶対渡さないから」 幼い頃はその力も、意志も持てなかった。 だが、今はその意志も、方法も知っている。 『今日あったことは、絶対に誰にも言ってはいけないよ?』 父親と交わした約束はもう必要ない。 それがなくても、大事な人を守る事は出来るから。 「……グレシア。ワタクシも、出ます」 「もう平気なん?」 浮かんでいた涙を拭き、三式を守るように戦っているドゥルシラを強い瞳で見返した。 「イーファなんかに守られるなんて、心外だもの。出られるのよね? グレシア」 「まあな。その為に、うちも来たんやし」 残っていた涙を拭ってやり、メルディアに仕える娘もへらりと笑う。 (ありがとう、三式。護ってくれて) 半壊した三式の操縦席から半身を乗り出し、メルディアは従者の頬にそっと手を添えた。 "主の名に於いて従者に覚醒を命ず……" ゆらり。グレシアのメイド服が消え、幾何学的な意匠の施された薄い服……グレシアの本来の姿……に切り替わる。 "主たる我が名はメルディア" グレシアの背中に幾何学的な翼が広がり、メルディアを包んでゆっくりと舞い上がった。 "従者たる汝が名は……『グレシア』!!" そして。 「イーファ! 味方の皆に通信を繋ぎなさい!」 「命令しないでよ、メルディアっ!」 凛とした声はまず外部音声で響き、続いて通信機から響き渡る。 「イーファ・レヴィー候補生、任務終了の為、援護に参りましたっ!」 それに負けじと、幾何学的な翼を拡げた新たな獣機からも通信が割り込んできた。 「メルディア・レヴィー候補生、『真知のグレシア』で戦線復帰します!」 流星の如く現れた新たな獣機を、クロウザは静かに見守っていた。 「増援、か」 増援はさらにもう一騎。心を喪った機械人形ではなく、人に転ずる真の獣機が加わったのなら、戦況は大きく動くに違いない。 「……クロウザ様」 「何だ?」 「ゆ、め、ゆ、め、自らも増援に、などとは思いませぬよう」 一語ごとに強い句点を入れ、足元の心持つ獣機は苦言を呈す。 「……くどいぞ、カヤタ」 非難めかしたカヤタの言葉に笑いつつ、クロウザの瞳には戦士のそれが灯っている。 「それよりも、あちらの御仁も見物かな」 言われ、カヤタは初めて気が付いた。 いつの間に現れたのか。クロウザの視線の先には、自らと同じく天上から大地を見守る影がある。 「あれは。……まさか、麒天!?」 だがそれを認識した瞬間、カヤタの騎体がぐらりと傾いだ。 「麒天だと……くッ!」 衝撃。 「疾ィッ!」 いつの間に間合を詰めたのか。深紅の獣機は、既にクロウザの目の前にある。 受け止め、受け流せたのは、戦技を極めたクロウザの反応速度だからこそ、だろう。 「クロウザ様!」 だがそれでも、咄嗟の打撃を受け止めるだけで精一杯。カヤタは失速し、混戦の大地へ真っ逆様に墜ちていく……。 「麒天……か」 墜ちていく漆黒の獣機を静かに見下ろし、そいつは低い声でぽつりと呟いた。 「可笑しゅうございますか? 主」 響くのは足元からではない。男の耳元へ、囁きかけるように届いている。 「……別に。我々も往くぞ、鬼天」 黄は麒。麒は鬼。 央に座し、皇にかしずくべき天の王。麒天と呼ばれたその影も、音もなく大地へ向かって飛翔を始める。 「御意に」 蒼い空に残るのはただ、涼やかな少女の声のみ。 「麒天……槐丸様が使っておられた騎体であったな。確か、名を……」 イェドの隠密としてカヤタを賜った時に話された秘を、クロウザは穏やかに口にした。 「麒天カースロット、です」 麒天はカヤタ達『四方の四天』、イェドの至宝を束ねるべき皇の騎体に与えられた号。 そして暴走し、主と共に行方を消した、狂える鬼神の忌み名でもある。 「捜索命令も任務の内、か」 エノクに向かうよりは、そちらが先かな、とクロウザは静かに想う。 「はい。ですが……」 「うむ。何とかならんか、カヤタ」 その麒天の一撃を食らい、黒天のカヤタは自由落下の最中だ。 地表激突まで、あと数秒も無い。 「残念ながら……翼も間に合いませぬ」 さして無念にも取れぬカヤタの言葉で、その貴重な数秒は瞬きする間に過ぎ去った。 蒼穹を、銀色の翼の群れが舞っている。 陽光を弾く翼の形は鋭い直線。刃の如き輝きを持って、真っ直ぐにココの空を飛翔している。 騎体を構成するラインは見事なまでの整合性と統一感を持ち、代替部品を一切使っていない純粋な騎体である事を示していた。 一式ギリュー。 グルーヴェの中枢部隊にごく僅か配備されるだけの、最上級機である。代替部品の寄せ集めで組み上げられた二式以下の獣機とは格が違う。 その見事なまでの銀翼に、影が差した。 「そこな獣機群、ここをココの領土と知っての行いか。反応無き場合、侵略行為と認めるが……如何に!」 見上げれば、太陽の内に一つの影がある。逆光になって見えないが、陽光の下なら灰色の装甲を持つ高機動獣機と見えるはずだ。 グレイ=ドール。かつての戦いでは、白き箱船よりの使者『客人』と呼ばれた騎体である。 「むむ。急ぎ故、失礼した」 意外にも、謎の獣機群はあっさりと言葉に応じた。 相手が一騎と知っているからか、特に慌てる様子もなく、悠然と大地に着地する。 獣機編隊の先端、巨大な双角を肩装甲に載せたギリューの操縦席が開き、軍服に身を包んだビーワナが姿を見せた。 ギリューがすいと伸ばした掌の上に降り立ち、グルーヴェ式の敬礼をしてみせる。 「小官はグルーヴェ王国獣機師団団長、フェーラジンカ・ディバイドブランチ大将と申す」 獣機と同じく、巨大な双角を持つ青年将校だ。枝状ではなく板状に大きく広がった特徴的な角は、ヘラジカ種のビーワナである事を示している。 「ココ王国直轄領スクメギ代官補佐、リヴ・エイダである。グルーヴェの獣機師団長がココに何用か」 こちらもリヴェーダが姿を見せ、イシェの指示で伸ばされた掌にゆっくりと降り立った。 無論、警戒は怠っていない。防御呪文の展開はギリューの中で既に終えている。 「スクメギとシーレア高原にかつて無い規模の魔物の群れが出現したと聞き、親衛中隊十機を率いて支援に参上した次第。国境を越えた無礼はお詫びしよう」 臆面もなくそう言い、ジンカ将軍は素直に頭を下げてみせる。その様子は、リヴェーダの目をもってしても嘘をついているふうには見えなかった。 「……今のグルーヴェにそのような余裕があるとは思えぬが?」 グルーヴェは内乱のただ中にある。主力戦隊の獣機師団となれば、出番に事欠かないはずだ。 「ふむ。我が祖父、トゥーナッカイの罪滅ぼし、と言えば分かって頂けるだろうか?」 だが、さすがにその言葉には、リヴェーダも言葉を失った。 「…………それは」 トゥーナッカイ・ディバイドブランチと言えば、先日のスクメギ方面軍の総司令官。その東の蛮族もかくやという指揮には、リヴェーダ達も散々手を焼かされたのだ。 ドラウンやシェティスのような勇将であれば敵ながら見事と褒めも出来るが、あの蛮行ではフォローのしようがない。 「あれは我が祖父ながら、恥ずかしい限り。彼奴の汚名を少しでも雪いでおかねば、我が一族はココの民に末代まで笑われよう」 が、とジンカは続けた。 「それと、こちらに不可侵の約束をして欲しくてな。実は、その貸しを作っておきたいのだ」 「……我がシーラ陛下はグルーヴェに侵略などなさらぬ。そう疑心暗鬼にならずとも良い」 老爺の横柄な物言いにイシェでさえ青くなったが、言われたジンカは高らかに笑い返した。 「小官は小心者でな。我が国の問題は我が国で着けたい故、確約を取り付けねば安心出来ぬのだ。ミクスアップ辺りはどう思っているか知らんが……それこそ、今のグルーヴェにはココを侵略する体力も、ココの侵略を防ぐ体力も残っておらぬ」 そう呟くジンカの瞳にも、嘘はない。 「まあ、そういう事ならよかろ。イシェ、これからシーレアに向かうが、良いか?」 「……良いのか?」 意外と言えば意外な決断に、イシェは思わずそう聞いた。 「少なくとも、悪い人物では無さそうだ。それにシーレアからは苦戦の報を受けておる」 魔法分隊は王都の警戒で総力を集められず、プリンセスガードや獣機隊も本調子ではない。正直、タダで手伝ってくれるという者を拒む理由はなかった。 「ではクルラコーン、初陣と行こうか」 その言葉と共に後に並んでいた一式と、ジンカの獣機が一斉に翼を広げた。 先程勝手に動いた事といい、操縦者なしでも通常機並みの動きが出来るといい、どうやらジンカの獣機には自我が残っているらしい。 「アルジオーペの居ぬ間に、少しくらい借りを作っておかねばな。総員、出撃!」 そのまま操縦席に滑り込み、直線的な翼を広げて一斉に飛翔。グルーヴェの最精鋭部隊は客人に続き、シーレアに向かって移動を開始する。 少女には、世界の全てが手に採るように視えていた。 「そこ!」 弓を引き、射た。 轟然と放たれた光矢は少女の意のまま、狙い通りの場所へ。いや、それ以上の効果を示す場所を、寸分違わず打ち抜いた。 「ありがと」 「ご主人。次、来るで!」 言葉の応酬はごく僅か。だがそれだけで、全ての動きは歯車の単位まで連動する。 意志無き三式には有り得なかった合一感が、メルディアの全身を駆け巡っていた。思うがまま、まさに自身の延長の如く、新たな獣機は力を振るっている。 「これで、さっきの借りは無しですから」 ぽつりとそう言い、イーファの後に迫っていた魔物を軽く打ち抜いた。次の瞬間には、数本引き抜いた矢を速射で解き放っている。 無論、全弾命中。イーファが槍を振るっていた相手までが大地に崩れ落ちていた。 「何よ! メルディアに近寄ってる魔物を何体倒したと思ってるのヨ!」 「それは、こっちも同じです」 崩れた相手には目もくれず、イーファは新たな相手へ突撃する。 「イファ、魔物に止めが……」 「メルディアは陰険だから、急所しか狙わないわよ!」 大地を滑るように舞い、振られた槍は確実に魔物を両断。翼を用いた三次元の高速離脱は、魔物達に触れる事を許さない。 「やるなぁ、イーちゃん」 「イーファ様、力任せなのは得意ですから」 「何よぅ!」 「お前ら、うるせえぞ!」 共用回線にロゥの怒鳴り声が飛び込んできた。位置が近いせいか、ノイズがほとんど無い。 「あ。力任せがもう一人……」 「ンだと!」 キレるロゥを颯爽と無視しておいて、メルディアは傍らの水晶盤を見ながら自分達の指揮官に報告する。 「そんな事より隊長。グレシアが召喚士の位置を掌握しました。いつでも強襲、行けますが」 乗ってみて分かったが、グレシアは情報収集と遠距離攻撃に向いた獣機だった。偵察と弓術を得手とするメルディアには、心強い事この上ない騎体特性だ。 「了解した。ロゥ、イーファ、行けるか?」 シェティスは半歩下がり、メルディアの支援に付く。装甲が薄いシスカは、ハイリガードやドゥルシラに比べて突撃戦に弱い。 「当然! さっさとケリ着けるぞ!」 「了解ですっ!」 「なら、道を拓きます」 その言葉と共に、グレシアの掌に光の珠が生まれた。光球は長弓につがえられ、放たれた瞬間に無数の光の矢へ転じ、迫り来る魔物の群れを端から貫いていく。 光の弾雨が切り開いた回廊へ、二騎の突撃獣機が躍り込み……。 果たして、その先にいた。 「な……ッ!」 「何だと……!?」 ヴルガリウス。 六本腕の召喚士。赤の後継者たる、禿頭の巨漢が。 そして少女を肩に乗せた、赤い仮面の男の姿が。 |