拗ねたような口ぶりで呟くのは、闇色の少女だった。 「教えてあげる、ね。まったく、偉そうなのは誰に似たのかしら? ローリ……いや」 見下ろすのは地を駆ける紅の少女。戦装束をまとったローリの今の名は、 「ブルームソニア」 と云う。 「私は私よ。他の誰でも、ない」 迫り、ぶつかる風の中。少女の歪む口元に、言葉が思わず突いて出る。 前後に一切の味方は無い。あるのはただ、闇色の少女・トウテツの喚び出した、異形の獣の大軍団だ。 彼らが狙うのは、目の前に走り来る少女わずか一人。 ブルームソニアの銘を持つ、赤き衣の戦乙女。 牙、爪、怪腕。武装と化した異形の全ては、たった一人の少女を屠るためだけに、ある。 対するローリは、まるきりの素手。 「ローリちゃん!」 コスモレムリアの科学魔法で生み出された人工精霊……ソニアの力が結晶化した長杖は、戦域のはるか後方、ただ一人の少女を護るため大地に突き立っている。 一対五十。 武器は、無い。 圧倒的不利という言葉さえ足りぬ、絶望の戦況。 それでも、少女は疾走を止めることがない。 口元には未だ笑み。 浮かべたまま、接敵する。 「はああっ!」 巨大な怪物の腕を駆け抜け、小さな異形を蹴り飛ばし、同じ大きさの妖獣を振り払ってなお、ローリは駆け、スピードを緩めることもなく。 疾走する。 「ふふ。私を倒せば終わりと思っているのね……」 少女が駆け抜ける敵陣の最奥部。異形を従え、黒衣をまとった魔物使いも、静かに笑みを湛えたまま。 ローリが標的と定めたのは、魔物使いであるトウテツただ一人。敵の攻撃を避け、払って駆ける今の動きは、まさしく敵陣突破のみを考えた戦い方だ。 確かに、魔獣の召喚者であるトウテツを倒せば、魔獣達は姿を失い、戦いは終わる。 「でも、甘い」 大地に落ちるトウテツの影からは、未だに黒い異形が姿を見せ続けている。その数は既に百を超えているだろう。なおも厚みを増す魔獣の防御陣は、いかにブルームソニアが運動性に長けようと、そう易々と抜かれるものではない。 事実、必死の疾走にもかかわらず、彼女の位置は敵陣の真っ只中からほとんど動かなく……いや、動けなくなっている。 「……誰が指揮官狙いですって?」 しかし。 前後左右、上方下方。見渡す限りの総てを敵に囲まれてなお、少女は高らかに叫び、右の腕を天に掲げる。 負けていない。 まだ、少女は負けを認めていない。 理由は簡単。 負ける理由が、ないからだ。 天衝く右手。魔物に埋もれた空指す腕に、凛という鈴の音が高らかに響き渡る。 「スペルリリース! モータルソニア!」 その瞬間。 無数の敵の群れが、中央から炸裂した。 〜華が丘1987〜 leg.2 フォーム・チェンジ 「な……っ」 すぐ傍らで炸裂した魔物の残骸を見遣りながら、トウテツは呆然と呟いた。 魔物の包囲網の中央。 ほんの一瞬前まで絶体絶命の位置にあった少女は、既にその位置にはない。 「言ったでしょう? 戦い方を、教えてあげるって」 響く声は上方から。 蒼穹に広がるのは、闇さえ覆う黒い影。 それをばさりとひと打ちしたのは、蒼いケープに身を包んだローリの姿だ。長柄のホウキに悠然と腰を下ろし、片手には革張りの分厚い古書。 けだるげに古書のページをめくり、ついと敵陣を指し示せば、その一点で無数の光爆が連鎖する。 ページの表面に輝くのは無数の魔術文字。そこに光が疾走するたび、周囲を翔ける光爆は色を変え、熱さを変えながら、迫り来る魔物を薙ぎ払っていく。 「フォームチェンジ……」 それがブルームソニアの戦い方。 どうやら長杖に頼らずとも、戦う術はあったらしい。 「ふふ、それでなくては。ドレイク!」 魔物の半分ほどが焼き尽くされたところで黒衣の魔物使いも静かに微笑み、構えていた細い鞭を鋭く振り下ろす。 大気裂く音が合図となったのだろう。味方であるはずの魔物達を押しのけ、天翔ける魔術師の前に現れたのは、銀色の飛竜だった。 瞬きするよりも早く、音速超過の白雲をまとってローリの元へと殺到する。 「少し大物ね……マニューバ!」 悠然と紡がれた言霊にホウキが応じ、ローリの体も弾き出されるように前へ。 打ち合わされた飛竜の顎を紙一重でかわして、くるくるとロールを一つ、二つ。空撃つ翼の追撃を軽くいなし、慣性を魔術でねじ伏せて強引にターンをかける。レッドアウト確実な高機動反転の中、尻尾のリーチの外から放たれたのは、百を超える金色の光球だ。 音さえ従える飛竜にやすやすと追い付いた光速の弾丸は、黄金の爆炎と化して銀色の甲殻を包み込む。 炸裂。 咆吼。 「……へぇ」 そして、感嘆。 魔術書を前へと構えたまま。少女の口から紡ぎ出されたのは、素直な驚きの言葉だった。 黒煙を切り裂いて現れたのは、銀色の外殻を持つ竜の翼。陽光弾く白銀の鎧は無数の光弾を受けてなお、傷一つ付いていない。 「さすが竜。魔法防御はハンパじゃない、か」 言霊一つで方向転換と急加速を同時に発動。再び音速を超えようと羽根を撃つ飛竜の下方に飛翔して、ロールを掛けながら再び魔術を叩き込む。 次に放たれたのは、槍の如く研ぎ澄ませた氷の柱。狙いは、装甲の薄い腹だ。 「子供だましね……」 しかし、それさえも無駄。いかに柔らかい部分とはいえ、頑健な魔法防御は飛竜生来の物だ。生半可な魔術など通しはしない。 目標を見失った飛竜が再びローリを捕捉するまでは時間が稼げそうだが……魔術が通じない以上、ローリに打つ手はない。 仕方なく、ローリは上方へ急加速。 「あら。覚悟を決めたのかしら?」 「まさか」 慣性無視の急制動。輝く太陽を背にすれば、目の前に迫るのは白雲をまとう重装飛竜の姿。 魔術は通じぬ。 そして空は、飛竜の独壇場だ。 逃げ場のない天空のど真ん中。抗う術を失った少女に、もはや為す術はない。 「……チェックメイト、ね」 はずだった。 けれど、ローリの口元に浮かぶのは、なおも笑み。 負けていない。 負ける理由が、ないからだ。 「どちらが終わりかしら?」 魔術の通じない相手なら、ローリが次に切るカードはただ一つ。 魔術書を支える右手を悠然と空に掲げ、鈴の音を凛と響かせる。 「スペルリリース! アイゼンフォーム!」 辺りを揺さぶる轟音は、巨大な重量物が大地に叩き付けられた衝撃音だった。 無論、少女一人の重量ではない。 大地に即席で創られた、ねじれ折れ曲がった奇怪なオブジェは、白銀の重装飛竜の主翼だったものだ。 「な……………っ!」 そう。 「……私の勝ち、のようね」 敗れたのは少女ではなく、飛竜のほう。 勝者として大地に立つ今のローリに、魔術師の法衣はない。 物理法則をねじ伏せるための長柄のホウキもなかった。 浅黄の装甲服をまとう彼女の右腕を覆うのは、己の身長をはるかに越えるあまりに巨大な杭打ち機。 十メートルを超える長槍を音速超過のカウンターで叩き込まれては、いかに頑強な飛竜とて耐える術などない。落下速度と重力加速。先程まで完璧に無視していた物理法則全てを味方に、ローリは鉄壁の魔法防御を打ち砕いたのだ。 鋼の墓標に頭蓋から撃ち抜かれ、地に堕ちた飛竜は、二度と羽ばたくことなく影の中へと崩れ去る。 「アイゼンパターン……ツールイジェクト」 その言葉と共に。右腕を覆う杭打ち機は全ての束縛を失ったかのように崩れ落ち、バラバラになったパーツは次々と生まれる極小の魔法陣の中へと沈んでいく。 「コール!」 手首の感覚を確かめるようにを軽く振り、ローリは再び言霊の解放。両腕に描かれた電子回路の如き文様が輝きを走らせれば、再び無数の魔法陣が両腕を覆うように現れていく。 魔法陣から喚び出されたのは、またもや極小のパーツ群。 「アイゼンパターン……セットアップ」 言葉と共に浮かんでいたビスが螺旋を描き、パーツの群れを次々と貫いて腕の紋章へと接続、固定していく。 ほんの一瞬。魔物達が警戒の距離を取る間に、部品の群れだったものはハードポイントに固定され、己が姿を取り戻す。 組み上がったのは、両腕を覆う一対の大口径速射砲だ。 最後に接続されたトリガーに指を当て、鋼鉄の戦乙女は静かに呟いた。 「ファイア」 ど、という初弾以外は、連弾する爆音にかき消されて聞き取ることが出来ない。 「ローリちゃん……すごい……」 恐ろしく一方的な戦いを、はいりは呆然と見守っていた。 ブルームの長杖を支点とした、桜花の結界の中。ひらひらと舞う桜の向こうで繰り広げられる虐殺は、あまりに非現実すぎて何の実感も湧きはしない。 だが、そんなはいりの傍らで、苦々しい声が響いた。 「ったく、あのバカ……ッ!」 はいりの隣にいるのは、猫に似た小動物。 「結界も張らずに、何やってんだ……」 猫に『似ている』というだけだ。身の丈ほどの長い耳を持つそれは、図鑑で見たどんな種類の動物とも違ってみえる。 強いて言えば、猫……に一番近いだろう。 「え……?」 「……しかも、部外者まで巻き込みやがって」 もっとも、猫は喋らないが。 「キミ……誰?」 「黙ってろ! 気が散る!」 「あ、う、うん」 猫に怒鳴られるという経験はあまりに非現実すぎて、さすがのはいりもそう答えるしかなかった。 「全く、好き勝手にやってくれる……」 大口径砲を再び魔法陣の中に戻すローリを見遣り、さしものトウテツも苦々しげに呟いた。 いかに魔物使いとはいえ、無尽蔵に魔物を生み出せるわけではない。魔法とて一つのルールに縛られる力である以上、限界はあるのだ。 「私の部下のほとんどを灰にしてくれて……」 残っていた数体の魔物を影に戻し、細身の鞭を鋭く一振り。 ぴしり、という乾いた音が大気を打ち、少女の戦意を力強く高揚させていく。 「アイゼンパターン……コール!」 次にローリの両腕に現れたのは、小口径のハンドガンだった。近接能力に優れた短銃を双手に構え、少女はさらなる疾走を開始する。 「でも、殺すわけにはいかないの。ここまでされたのに、憎たらしいったらないわ」 空を切り裂く鞭をハンドガンの乱射で叩き落とし、ローリは一気に間合を詰めていく。 「私はキミ達を許さないっ!」 鞭の間合を封じる距離から繰り出されたのは、装甲鈑に覆われた肘の一撃。先ほどの召喚でハンドガンと一緒に喚び出しておいた追加装甲だ。 鈍い衝撃と手応えが伝わった瞬間、ローリの体がぐらりと傾ぐ。 「あら。でも、貴女のことを……母上とお姉さまも、待っているわよ?」 ローリが突いたのはトウテツの腹ではない。トウテツが退がり際に放った蹴打が、ローリの一打よりも早く彼女の装甲鈑を蹴りつけたのだ。 「……五月蠅いっ!」 突然の打撃にバランスを崩してたたらを踏むローリだが、それでも倒れ際にトリガーを引き絞ることを忘れない。 「ママも姉さんも……貴様らから、かならず取り返してみせ……つっ!」 だが。 倒れ込んだローリの腕に、影から現れた黒い蛇が絡み付き……。 その牙を、が、と立てた。 「ローリちゃんっ!」 崩れ落ちるローリを見て、はいりは結界の中から思わず駆けだしていた。 「出るな、馬鹿ッ!」 だが、はいりを見ても、トウテツがその笑みを崩すことはない。 「あら。まだいたの……?」 魔性の気を持つ笑みに圧され、はいりはその場で足を止めた。心でも体でもなく、魂そのものがその笑みの恐怖をはいりに伝えてくる。 これ以上進めば、命はないと。 「まあ、気になるなら誰かに言うが良いわ。どうせ誰も信じないでしょうけどね……ふふっ」 「く……そっ!」 動けぬ二人の少女を嘲笑うかのように、影の中から人型の魔物がゆっくりと浮上する。三つの犬の頭と毒蛇の尻尾を持つそれは、先ほどローリに毒牙を立てた蛇の本体だ。 毒に体を縛され、転がったままのローリをゆっくりと肩に担ぎ、そいつは主たる少女の命令を待つ。 「ケルベロス。戻るわよ」 言葉と共にトウテツが鞭をかざせば、その姿は霧となり、風の中へと散っていく。 だがその瞬間、ケルベロスの肩で動けぬはずのローリが右手を高く掲げ上げた。 「はいり! 受け取って!」 霧となって消える右手の先。大きな弧を描いて飛翔するのは、先程までローリの右手に輝いていた、銀色の細い腕輪だ。 「あ……っ!」 慌てて受け取るはいりの手の中、踊る腕輪が小さく凛と鳴る。 「……鈴の音が」 鈴の音に驚く猫とは対照的に。ローリはその音に幾分満足したか、こちらを見つめる猫へと声を放つ。 「ニャウ。はいりを……たの……」 言い終えぬうちに、ケルベロスとローリは霧となって消滅。 「ローリちゃんっ!」 腕輪を抱いたまま。 「ローリちゃん!」 はいりの叫びが届くことは、もはやない。 「あら……。ハウンド!」 転移魔法は途中で止められないのか、上半身を残すのみとなったトウテツはわずかに苦笑。言霊と共に、残った影の中から犬面の魔物を召喚する。 「ソニアの鈴を回収なさい。人間は、別に殺しても構わないわ」 投げ捨てるように命令を残し、トウテツもその場から姿を消す。 残されたのは、犬の頭を持つ人型の魔物が一匹。 ゆっくりと巡らせる犬の視線と、 「やば……」 はいりの目が、合った。 「ちっ!」 弾かれたように猫が声を上げ、それと同時にハウンドと呼ばれた魔物の周囲に光の壁が生み出される。 「逃げろ!」 猫のその声に押し出されるよう、はいりはその場から逃げ出した。 造成地を抜け、あぜ道を走り、はいりは学校へ向かっていた。華が丘はまだまだ田舎。助けを呼ぼうにも、はいりの家の近所では助けを求められる相手がいない。 学校なら、まだ先生達が残っているはず。 「誰か……誰かぁっ!」 だが、公園を抜け、校庭に入ってなお、人の姿がない。まだ学校が終わって少ししか経っていないのだ。先生も残っているだろうし、校庭で生徒達が遊んでいてもおかしくない時間帯なのに……。 「悪いが、ここには誰もいないぞ」 ぽつりと呟いたのは、隣を走っていた猫だった。 「……へ?」 「ここは結界の中……誰もいない世界だ。あれだけ騒ぎを起こして周りに誰も来ないの、不思議に思わなかったのか?」 「あ……そういえば」 無数の魔物が空を覆い、巨大な竜と空中戦を繰り広げ、あれだけ重火器を使いまくったのに……警察はおろか、野次馬の一人さえ来ていなかったではないか。 「お前、名前は」 そっか、と納得しているはいりを尻目に、猫は再びの問い掛け。 「え?」 「名前だよ。名前」 首を傾げるはいりに、猫はいくらか苛立った様子で質問を繰り返す。 「はいり。兎叶はいりだよ」 そして猫が次に放った言葉は、はいりの想像を絶するもの。 「ならはいり。これから、その鈴の使い方を説明する。一回しか言わないから良く聞け」 「……へ?」 あまりの内容に、反応が一瞬遅れ、理解はさらに遅れた。 それは即ち、ローリのように戦え、という事か。 「え? で、でも、あの怪物は、キミが……」 犬面の怪物が動き出すより早く、猫の放った光の壁が怪物を閉じこめたはず。鞭使いの少女も姿を消したし、あの光の壁で怪物も無事に倒せたのではないのか。 「あんな薄い結界、時間稼ぎにしかならん。すぐに追い付いてくる」 「嘘っ!」 その時、遙か彼方でガラスの割れるような音がした。 あまりに儚いその音に、猫がやれやれ、と首を振る。 「ソニアの鈴が反応した以上、お前にもどれかのソニアの適性があるって事だ。どっちにしても、生き残るには戦うしかないぞ。……ほら来た」 猫が尻尾でひょいと指し示せば、誰もいないはずの空間に四つ足で駆ける異形の姿が見えた。 「え……っ!?」 犬の仮面を付けた、人型の影である。はいり抹殺を命じられたハウンドだ。 「焦るな! 俺の言うとおりに……」 「う、うん……」 いつの間に付けたのか、ローリから受け取ったリングは右手にしっかりと填められていた。 はいりはその感触を確かめ、もう一度ぎゅ、と拳を握り締める。 「右手を構えろ!」 猫の言葉と共に右の拳を前に突き出し、手首を支点に軽く一振り。 凛、と響き渡るのは、世界を揺らす鈴の音。 「そして叫べ! 解放!」 「か……解放っ!」 言霊と共にはいりを包むのは、眩いばかりの赤い輝き。 襲いかかったハウンドを弾く赤光が、はいりの姿を戦士のそれへと変えていく……。 「これ……が?」 強い輝きがおさまった時。はいりの体を包んでいたのは、赤い戦装束だった。 初めて変身したローリが着ていた物と、意匠は全く同じもの。確か、名を…… 「ブルームソニアか。ならはいり、ロッドで何とかなる!」 ブルームソニアが得意とするのは中距離の範囲攻撃だ。細かい狙いを定めなくても攻撃できるし、寄ってきた相手にカウンターを狙う手もある。初めてのはいりでも何とか戦えるだろう。 それを証拠に、ハウンドもこちらの出方をうかがうように間合を保ったままだ。 が。 「え? ローリちゃんが持ってた杖なら、ないみたいだけど……?」 その言葉に、猫の反応が一瞬遅れた。 「精霊武装が……ない!? ンなバカな!」 精霊武装はソニアの本質が形になったものだ。 逆を言えば、精霊武装なくして、ソニアの力は使えないということになる。恐らく、今のはいりではトウテツの魔物と戦うことさえ出来まい。 二人のやり取りを解したか、野獣の本能がはいりの弱点を悟ったか、ハウンドはこちらとの間合を詰め始めている。 「じゃあ、ローリちゃんがやってたみたいに……」 ハウンドの動きを小さな瞳で必死に牽制しつつ、猫ははいりの言葉を真っ向から否定。 「無理だ! 精霊武装も出せないようなヤツが、フォームチェンジなんか!」 ローリでさえ、フォームチェンジが使えるようになったのは戦いを始めて半年も過ぎてからだ。精霊武装でさえまともに使えない半人前が、変身したばかりでいきなり使えるはずもない。 「来る!」 その瞬間だ。 絶体絶命の使者が、突撃を開始したのは。 |