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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

(6)
 リチェルに励まされ、何とか元気を取り戻したマリネは、遂にカギ(Key)の置いてある音楽室の扉まで辿り着いた。ここでカギを手に入れることが出来れば、Key Modeは終わったも同然である。もちろん帰り道もあるが、行きと帰りでも気の持ちようが違う。
「行きましょう。」
「う、うん…。」
 リチェルに促され、マリネが恐る恐る音楽室の扉に手をかけた途端、音楽室の中からピアノの音が響き始めた。もちろんピュウイの弾くピアノの調べである。昼間聴けばそのメロディの美しさに心奪われるような名演奏も、真夜中に聴けば恐怖以外の何ものでもない。思わず悲鳴を上げ、リチェルに抱きつくマリネ。最早友人の前で無様な姿は見せられない…という小さなプライドはとっくに無くなっていた。今はただ、物怖じしない友人の存在に感謝し、頼ることで精いっぱいだった。

「なるほど、あの娘がシーラのPGの心の拠り所になっているわけね…。」
「PGの娘はマリネ、隣の娘はリチェルというらしいですよ。」
「ふむふむ、つまりあの娘がいなくなれば、マリネちゃんは孤立無援になっちゃうわけね。フフっ・・・。」
「また何かつまらないことを考えているみたいですね。」
 闇の中でほくそ笑むティシャを、無表情で見つめるザン。まぁ、彼女が見ていて何もしないということはないだろう。

「いい?ちゃんと手を繋いでいてよ。怖いんだから。」
 マリネの声は命令調だが、言っている内容は情けない。
「はーい…んぐっ…。」
 返事の途中で、突然後ろから口を塞がれたリチェル。驚いて後ろを見ると、そこには不気味な笑みを浮かべるティシャの顔があった。彼女は素早くリチェルを音楽室から遠ざけると、やっと口から手を離し、小声で事情を説明する。
「ごめんなさいね。貴女とマリネちゃんを分断させたかったのよ。もちろん貴女に、そしてマリネちゃんにも危害を加えることはないわよ。
 …おどかすけど。」
 こういう時のリチェルは冷静(というか、鈍感?)で、悲鳴を上げることなく事情を飲み込むと、こくこくとおとなしく首を縦に振った。
「フフッ…物分りのいい娘は好きよ。ご褒美に、一足早くハイニちゃんのいる体育館に連れて行ってあげる。」

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