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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

 そんなマリネを、棚の上から見つめる四つの瞳。
「無防備な娘を襲うのは気が乗らないけど、あたしたちも人形だからお互い様だよね、セミファス。」
 セミファスは返事をする代わりに黙って(人形が持つには)大きな箱を持ってくる。作戦開始ということだろう。

 ボトッ・・・。
 何かが棚から落ちたような音がした。マリネはじっと音のした方に目を凝らす。闇に紛れてカサコソ動く音がする。その姿を確かめる必要は・・・なかった。
 ボトボトボトッ・・・。
 続けて幾つもの何かが落ちる音。そのひとつはマリネの肩に落ち、首筋を這うことで、彼女は見なくてもその生き物(動いているから生き物なのだろう)が何かわかってしまった。
 それは何匹もの蛇だったのだ。<毒は抜いてあります。
「!」
 マリネは恐怖で悲鳴さえ上げられない。慌てて準備室を飛び出そうとした彼女だったが、すぐに自分の格好に気づく。上着はもちろん、スカートさえ穿いていない。そんな格好で(友人しかいないとはいえ)廊下に出ることは彼女のプライドと羞恥心が許さなかった。とにかく服を着ないと・・・。手を震わせながらも上着のボタンをかける彼女だったが、恐怖はまだ終らない。
 ボトボトボトッ・・・。
 再び何かが落ちる物音がした。今回は暗くても、触らないでもわかる。なぜなら近くで「ゲロゲロゲロ・・・。」という鳴き声が聞こえてきたからだ。
「ううっ・・・。」
 蛙は彼女が最も苦手としている動物のひとつだった。だがマリネへの追撃はまだまだ続く。
 ボトボトボトッ・・・。
 今度落ちてきたもののひとつが、彼女の手の甲に当たった。ぺちょっとした感触、蛇とは違うぬるぬるとした感覚の小さな物体が這いずり回っている。そう、それは何匹もの蛞蝓(なめくじ)であったのだ。
 最早悲鳴を上げている場合ではなかった。マリネは急いでスカートを穿くと、音楽準備室から飛び出した。彼女にとって唯一の幸運は、蛇と蛙と蛞蝓がお互いを牽制しあって動けない状態だったため、マリネはどの動物からも襲われることはなかった・・・ということぐらいだろうか。
「アマネさん・・・!?」
 準備室から物凄い勢いで出てきたマリネは、そのまま外で待っていたリチェルに抱きついた。一瞬驚いた彼女だったが、マリネが自分の胸の中で泣いていることを知ると、自らもマリネをぎゅっと抱きしめる。
「頑張りましょう。カギの置いてある音楽室は目の前ですわっ!」


つづく

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