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ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

「目標が校舎内に入ったようだ。」
 マリネたちの行動を影から監視しているセンからの連絡が入る。
「よし、Key Mode作戦開始っ!」
 リィレスの号令と共に、ティア・ハーツに緊張が走る。
「そのままターゲットは一階の階段付近に向かっている。」
 魔導通信から再びセンの報告が、中央管制室のリィレスに伝えられた。
「了解。セミファスとサモナはB−1地点で待機。」
「了解よ。」
「わかりました。」
 次々と情報と指令が行き交う。皆真剣なのだが、誰もがゴスロリの衣装を着ている姿は異様というしかない。

「確か、音楽室は三階でしたわよねぇ?」
「確かって・・・現役のフェ・イン生が音楽室の場所忘れてどうするのよ・・・。」
「もう、ただの確認ですわー。アマネさんのいじわるー。」
 とは言いつつ、軽口を叩ける相手が居た事がマリネには心強かった。ナンダカンダ言いつつも、強引についてきたリチェルに感謝していた。一人でKey Modeを達成する自信は、正直なかったからだ。かといって、逆に友人の前で不恰好な姿は見せたくないという、違うプレッシャーもかかってしまうわけだが。
「あら・・・?」
 マリネは二階へ上がる階段の踊り場に小さな影を見つけた。子供より小さく、漆黒のドレスに身を包んだ・・・それは人形だった。
「クリルラっ!」
 そんな格好をしている人形は、ハイニに奪われた自分の人形しか考えられなかった。
 ・・・普通ならね・・・。
 が、マリネは今がKey Modeであることを忘れて、階段を駆け上がっていく。人形に対する愛は、恐怖よりも強かったようだ。
「あ、ちょっと待って・・・。」
 リチェルの制止もマリネには聞こえない。
「目標、こっちに来たわよ。」
 黒いドレスに身を包んだセミファスが、階段上のサモナに通信する。先程の人形はクリルラの服を真似た彼女の姿だったわけである。
「了解ですっ。」
 サモナの小さな身体が、階段の最上段に置いてあった箱をひっくり返す。その中には大量の小さな球形の物体が入っていた。こちらの次元で言う、ピンポン玉というものだ。
 ピンポン玉は重力に引かれるまま、コロコロと階段を転がっていく。それは階段を駆け上がってきたマリネの、完全な不意を突く形となっていた。足元を見ていなかった彼女は 階段を転がるピンポン玉に見事に足をとられてしまった。
「ああああぁぁぁぁっっっ!」
 言葉にならない言葉、叫び声にならない叫びを上げながら、ずるずると階段を滑り落ちていくマリネ。<良い子は真似してはいけません。
「ほらぁ、Key Modeは色々な所に仕掛けがあるって自分で言ってたじゃないですかぁ。注意していかないとぉ。走るなんてもっての他ですってばぁ。」
「わ、わかっているわよ・・・。」

「あらあら、あの根暗なシーラのPG(プリンセスガード)にしては愛嬌のある娘ねぇ。」
「ティ、ティシャ殿っ!PGの前でシーラ様のことを呼び捨てにするのは・・・。」
「エイス、細かいことは言いっこなしですよ。シーラ姫は彼女の教え子みたいなものなのですから。」
 そう言ってザンが、しきりにハイニの視線を気にするエイスの頭をぽふぽふと叩く。当のハイニは先輩二人の性格を良く知っているためか、何も聞こえない振りをしている。
「そういうこと。おや、今度は二階に行くみたいね。」
 マリネの姿を魔導鏡で観て、きゃらきゃら笑っていたティシャだが、もちろん約束通り黙って見ているはずはない。
「ザン、私たちも行くわよ。」
「まっ、待って欲しいのだー。」
 もちろんエイスの制止に止まる二人ではない。ハイニはもう、最初からこの展開を予想していたのか、何も言わずにため息だけついた。


つづく

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