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 僕は・・・妹を傷つける奴を許さない。
 そう、例えそれが自分自身であっても・・・。

ネコミミ冒険活劇びーわな!
ティア・ハーツ
第4.5話「続きの番外」(後編)

(1)
「なるほど・・・話はよくわかりましたわ。」
 ハイニ・ランダールはティア・ハーツの話を聞き、頭の中を整理するように何度もこくりこくりと頷いた。
 ハイニィの机の上には今、人形にされたティア・ハーツが立っている。小さな人形である彼らの話を、ハイニィは椅子に座り、上から見ろして聞いていた。
 最初、部屋に飾った人形が独りでに動き出し、言葉をしゃべる事態に驚きを隠せなかったハイニィであったが、それがマリネの仕業であることを知り、すぐに納得して状況を把握したようだ。こういう所での、彼女の頭の回転は速い。
「確かに、マリネによって人形にされた人を何人か見ましたけれども、その人たちはみんな国家反逆罪に匹敵するような極悪人ばかりでしたわ。
貴方たちがそのような人たちではない・・・という保証はないですわ。」
「そ、そんなことはありません。」
 ピュウイル・ルーグスがみんなの前に立って弁明する。
「私たちは何も悪いことはしていません。なぜ自分たちが襲われているかもわからないですし、訊ねても教えてくれないのです。」
(別に、決して心当たりがないわけではないのですけどね・・・。)
 と、ピュウイの説明を聞きながら、セミファス・シィソーアはサモナにちらりと一瞥する。が、もちろん声には出さない。
「ふぅん・・・。」
 ハイニはウサミミをいじりながら(彼女が考え事をするときの癖らしい)、言葉を続けた。彼女の耳のピアスがキラキラと光る。
「兎に角、マリネに狙われているのなら、この部屋から出ない方がいいですわ。」
「それは・・・無理なようだ・・・。」
 今まで黙っていたセンが、ボソッとつぶやく。
「え?何で、何で?」
 ラレス・桜海は首を傾げながらセンを見上げた。自分にわからないことは、とりあえず聞いてみないと気がすまない性格らしい。
「エルマ・ジングがいない。たぶん一人で部屋を抜け出したのだろう・・・。」
「ああっ、そういえばっ!」
 見れば、愛くるしい魚のオモチャは、今は影も形もなかった。いつもはうるさいエルマくんが静かなので、不思議には思っていたけど・・・。
「ど、どうしようリィル兄?もしエルマくんが見つかって捕まったりしたら・・・。」
 その後の言葉を、ラレスは続けることができなかった。
 リィレス・桜海はハィニィと話をしていた。ピュウイとセミファス、サモナは三人で何か相談をしているみたいだったし、センとは今まで自分が話していた。虎仮面V3は・・・あれ?いない・・・。
 でも、他のティア・ハーツは知ってか知らずか(たぶん知っているのだろうけど)、誰も気にしていない。確かに虎仮面はいつも時々いなくなるから、今更いなくなっても誰も驚かないのだろう。でもそれ以上にわかっているのだ。彼は一人でもこの困難を克服するだろう。いや、彼にとってこの事態は、困難とさえ思っていないのかもしれない。それは仲間としての信頼・・・というより、畏怖に近い。
 ・・・とにかく、つまりリィレスとハィニィは二人だけで話をしていたのである。その話の中でラレスは・・・。
「・・・美しいですね・・・。」
 とリィレスがハィニィに語りかけているところを聞いてしまったわけである。
「何が・・・。」
 言いかけて、ラレスは口をつぐむ。何が美しいかは、自分でもわかるから・・・。
 彼女はちらりとハィニィを見上げた。
 自分より小柄なのにスレンダーで、
 自分より肌が白くて、
 自分よりフリルやスカートが似合っていて、
 自分より優雅で落ち着いている、
 自分と同い年の少女・・・。
 同じ女の子なのに、ラレスはハィニィのことをまるで自分とは別の生き物のように感じていた。
「ん?ラレス、どうしたのかな?」
 二人の内緒話を聞かれたのかと思ったのか、リィレスはちょっと気まずそうな笑顔をラレスに見せた。
「う、ううん・・・何でもない・・・。」
 ラレスは急いで兄に背を向けると、逃げる様にその場から去っていった。
「あ、ラレス・・・。」
「それよりも・・・。」
 ラレスを追いかけようとしたリィレスを、ハィニィが引き止める。
「本当に約束してくれるわよね?もしあたしが協力するなら・・・。」
 いつもはクールなハィニィの声が少し上ずっている。頬も遠くから見てもわかるくらいに紅潮していた。
「元の姿に戻った時、あたしと・・・デートしてくれる・・・ということを・・・。」
「もちろん、その約束はしっかり守りますよ。」
 リィレスは満面の笑みを浮かべる。その会話が、ラレスに聞かれていたことも知らずに・・・。

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