薄暗い部屋に身を置くのは、小柄な少女。
(もう、ここに来てどれくらい経つのだろう……)
たった一人の部屋で想いを寄せるのは、かつてのこと。
慌ただしくも充実感に満ちていた、戦いの日々のこと。
けれどそれは、過ぎた日々。
(外に……出たいな)
分厚い包帯と拘束具に固定されて、左腕は動かない。
明かりもない部屋。右手でそっと触れるのは、閉ざされた窓の隙間である。
外側から鍵の掛けられた鎧戸は、彼女が外の光景を見る事すら拒むもの。
「日明。出ろ」
そこに掛けられたのは、背後からの声だった。
どうやら外は夜なのだろう。片目を包帯で隠されたコトナと同じくように、頭を包帯で覆った娘は……。
「……リフィリア」
かつて共に戦った娘の姿も、あの頃からは大きく様変わりしていた。
コトナは思う。思い出す。
薄紫の空に覆われた、けれど輝かしい日々の事を。

第7話 『この世界を、もう少しだけ……』
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