Excite NaTS #5.5『隣り合わせの絶望』 フェアベルケンの命運を賭けた戦いは終わった。 「……雅華さん」 崩れ落ち、原形を留めていないスクメギの廃墟を見上げ、メティシスは呆然とその名を呟く。崩れ落ちるスクメギの中、客人から彼女を庇った雅華がどうなったのかは分からない。 けれど、いまだ姿を見せぬ彼女がどこにいるかは……見当が付く。 大破した獣機が運ばれていく。重装獣機であるウシャスはあまりにも重く、二騎の獣機に支えられてようやく動かせるほどだった。 「そう……ドラウン様は、戦死されたの」 その傍らでスクメギ兵の報告を聞き、シェティスも静かに呟いた。 「シェティス……すまん」 ロゥの奥義でドラウンは片腕を失っていた。それが致命傷になったのであれば、男が死ぬ原因を作ったのは彼という事になる。 「貴方のせいではないわ。致命傷は、重力の力だったそうだから」 シェティスの知る中、そんな異能を使えるのはただ一人……。 「イルシャナ様! レアちんが……レアちんがいないの!」 泣きながらのエミュに、イルシャナは静かに言葉を告げた。 「エミュ。シーラ様から、エミュもすぐ王城に戻るようにと」 コーシェイに先程届いた言霊である。相当な非常事態であるらしく、代理のリヴェーダではなく、シーラ直々の命令だ。 「でも、レアちんが!」 箱船を説得して地上に戻った時には、少年はもういなかった。あの時同じ場所にいた誰に聞いても、どこに行ったかが分からない。 「レアルの事は私達が探しておくから。コーシェイが待ってるわ」 「……うん」 しぶしぶ頷き、術の支度をしているコーシェイの元へ歩み去るエミュ。コーシェイも最後の戦いで相当に消耗しているから、術を無駄に長引かせるわけにもいかない。 「レアル……どこに行ったのよ」 静かに呟くイルシャナだが、必死の捜索にも関わらず、レアルは見つからなかった。 それから数ヶ月が過ぎ、最後の物語が幕を開ける。 |