Excite NaTS #2.5 檻の中の解放者 スクメギ深部の悪夢のような調査が終わり、数日が過ぎた。 「エミュ……?」 狭い小屋の2階、そのさらに狭い牢屋の中。レアルはそこに幽閉されている少女へ静かに声を掛けた。 「あー。レアちん。どしたの?」 牢屋の中。悔恨を繋ぎ、絶望を閉じこめる場所であるはずのその場所で、少女の声はどこまでも明るい。まるでそこを牢屋だと理解していないのではないか、と錯覚する程に。 「……別に。ちょっと、顔を見に来ただけ」 娘の隣の間に幽閉された少女……運命の少女と呼ばれた娘……は、レアルをちらりと見やり、無言でベッドに戻ったきり。遺跡の忌まわしい光景を夢に見てしまうからか、眠ってはいないようだが。 いや、そちらの方が普通の反応なのだ。しかも、レアルこそがエミュの投獄される原因を作った張本人。エミュが知らぬ事とはいえ、その彼にこんな無防備な笑顔を見せられるなど……。 「エミュは……どうして、笑っていられるの?」 思考を超え、問いかけの言葉が口をついて出た。 「お昼にはイルシャナさまも来てくれたし、今はレアちんも来てくれたからだよ? それに、ろーやに入ったのも初めてだしっ!」 屈託ない笑顔で言い、ベッドの下からこっそりと紙箱を取り出す。 「イルシャナさまがナイショで持ってきてくれたの。食べる?」 鉄格子の向こうから差し出されたそれはシュークリームだった。 レアルは無言で受け取り、そっと口に運ぶ。……美味しい。 「そだ。ね、レアちん、ポクがいつ出られるか分かる?」 「次の調査が終わるまで……だって。2〜3日くらい、かな」 遺跡の封印が解かれれば、すぐに次の調査隊が送り込まれるはずだ。そしてその機を狙って、グルーヴェも動くだろう。いや、動く。 何せ、その情報を流したのはレアル本人なのだから。 「そっかー。それまでイルシャナさま、大丈夫かなぁ」 ご飯ちゃんと食べてるかなぁ、お風呂入ってるかなぁ、と牢屋の中で他人を心配するエミュを、レアルは不思議そうに眺めていた。 その思いは一体どこから来るのか。そんな事を想いながら。 |