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6.第2次スクメギ攻略戦

「なるほど。これが、契約って事か」
 『ハイリガード』の操縦席に腰を下ろし、ロゥは小さく呟いた。
 名を告げられ、呼ぶ事で獣機の主となる。シェティスに言われた時はイメージが掴めなかったが、いざやってみるとなるほどその通りだ。
「わぁぁぁっ! すっごーーい!」
「……で、何でお前がいんだよ」
 で、当然のようにいるエミュに、ロゥは思わず突っ込んだ。
「えーだって、ポク人質なんでしょ?」
 獣機は一人乗りだから、操縦席もそう広いわけではない。当然二人目が乗るスペースなどないわけで……。
「もういいんだよ。人質は終わったの!」
 もともと人質など取るつもりはなかったし、そういう性格でもない。というか、膝の上に居座られても邪魔なだけだ。
「でも、ポクも獣機に乗ってみたかったの。いいよね? 乗せてもらっても」
 ぉぉん、という駆動音で獣機が答えた瞬間、正面の水晶板に数体の獣機が映し出された。
「……どうなっても知らねえからなっ!」
 そう言い放つと、ロゥは思いを集中させ、『ハイリガード』を駆け出させる。


「獣機が奪われた?」
 深夜の突然の報告にイルシャナは耳を疑った。
「アカレイヒが一騎と、例の白いイワメツキです。しかも賊はイルシャナ様の所の小間使いと詩人を人質に取ったようで。詩人の方は助けましたが、小間使いの方は獣機に……」
「何でエミュとレアルが……」
 しかもおまけ付き。客間で眠っているはずの二人が囚われている経緯に至っては、さっぱり理解出来ない。
「それは何とも。とりあえずこちらも獣機を出して押さえに掛かってますが」
「疑似契約した機体を出したの?」
「はい。調整も終わってますから、獣機の二騎くらいすぐに押さえられますよ」
 負けるな……。
 イルシャナはふとそう思ったが、口には出さなかった。
 何となく思っただけなのだ。根拠もない発言をして、不安がらせる事もない。
「ええ。テント村の住人の避難もよろしくね」
 ただ、それだけを口にする。


 素早く打ち込まれたログダリューの一撃を盾で正面から受け止め、強引に振り切った所で重矛を叩き込む。
 イワメツキ型の獣機は圧倒的なパワーと重装甲を誇る。真っ向からの打ち合いで中量級のログダリューが勝てる要素はほとんどない。
「よかったねぇ。リッちゃん」
 2騎目の獣機をいなし、矛の石突きでふっ飛ばした所でエミュがにこにこと呟いた。
「リッちゃん? 何が良かったんだ?」
「このコの名前、『ハイリガード』っていうんでしょ? だからリッちゃん」
 エミュがそう言う間にも、ハイリガードは3騎目のイワメツキを力任せに押し切っている。スペック的にはほぼ同格のイワメツキですら、白い重装機にとってはわずか数撃。
「ニセモノじゃなくって自分の好きな人と一緒に戦えるんだから、嬉しいよねぇ」
「ワケわかんね……調子狂うな、お前」
 そうぼやいた瞬間、ハイリガードが勝手に半歩下がり、無造作に左腕を振り回した。
「何で?」
 衝撃。
 背後から襲いかかってきたログダリューの頭部をバックラーで砕いた音が、鈍く響く。
「そういう所が、だっ!」
 その動作にようやくロゥの意志が随従。よろけたログダリューに矛の本撃を叩き込む。
 まさに自らの手足……いや、それ以上の働きで、ロゥの駆るハイリガードは群がる獣機を蹴散らしていく。
「だが、テメエは悪くねえ。むしろいい!」
 新たな主の雄叫びに、半身たる獣機はぉぉん、と悦びの叫びを返すのだった。


「重い……」
 一方、不満そうな輩もいた。
 シェティスだ。
 疑似契約できる獣機を見つけて乗ってみたのはいいのだが、いつもの疾走感がまるで感じられないのだ。
 今乗っているアカレイヒ型の獣機は純然たる高機動型。汎用機であるシェティスの『シスカ』よりもはるかに運動性に秀でているはずなのに。
「ちっ!」
 ログダリューの一撃を盾でギリギリ受け流し、返しざまに槍の一撃を叩き込む。
 一度弾かれ、二度目でようやく仕留められた。
「浮気は良くないという事か。それとも……」
 普段なら紙一重でかわしざまに一撃打ち込んで終わりの相手だ。機体の性能上回避しすぎるなら分かるが、今のはどう見ても遅れていた。
「本当に性能が下がっているか」
 言葉の通じない相手に説法を説くようなもどかしさに、小さく失笑。
「まあ、いい。いい加減、雅華やロゥと合流して帰投するか」



続劇
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