転章3.絶望の未来へ 響くのは、声。 少女の、声。 「今度も……上手く行かないのかな」 答えるのは、それと同質の声だ。 「無理だと思うわよ。もう、巻き戻す事も出来ないし」 諦観を含む声に、同じ声が力なく呟きを返す。 「そうだよね……。だったら、ここでなかった事にするのが、一番だよね」 一度目は、上手く行かなかった。 それを踏まえた二回目は、さらなる悲劇が訪れた。 「ええ。……もうあんな悲劇はたくさん」 ならば、その二つを踏まえた三度目は……今まで以上の悲劇が待ち受けていることだろう。 「ロッセも協力してくれる。……本当は万里も来てくれれば良かったんだけど」 呟くのは、銀の瞳の娘。 「万里はあの事……知らないから」 寂しげに漏らすのは、金の瞳の娘。 「そうね。だから、あたし達だけでやればいいのよ」 金の瞳の娘は、一度目の事を知らないが故に、世界を再び巻き戻した。 けれど銀の瞳の娘は、一度目も、二度目の悲劇も知っている。 見届けてきたのだ。 世界の外から。 世界の流れの、外側から。 「そのためには、まずは……ロストアークを取り戻して、クロノスを押さえる……」 世界の鍵と、それに抗う唯一の可能性。 「ええ。あの二つをあいつらに持たせておくわけにはいかないからね。……邪魔なんてさせないわ」 知っていても、知らなくても、訪れる悲劇なら……。 「起こすわよ……もう一度、大後退を」 もう、全てを止めてしまえば良い。 広がる二つの鷲翼が、イズミルの地を飛び立っていく。 新たな戦いの火種は、いまだ彼の地には燻っているのだ。 |