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22.荒狂塁黄泉間隙 (あれくるいよみのかんげき)

 薄紫の風の中。
 南を目指す九尾の白狐に合流したのは、同じく九尾の黒狐だ。
「アレク!? どうしたんだ、これは!」
 彼が驚くのも無理はない。万里の連れたオークが背負っているのは、灰色の巨人……奉が途中まで行動を共にしていた影武者ではない、本物のキングアーツの大将騎だったのだから。
「ニキ将軍の所の新型に……」
 どうやら鳴神が気にしていた新型騎の仕業らしいが……今はそんな事を悠長に聞いている場合ではないはずだ。
「それより、何とかならない? トウカギさん」
 巨人の背中の刀傷は深く、機体の内側まで達しているように見えた。千茅か昌の施した神術なのだろうか、蜘蛛の網のようなもので傷口は幾重にも塞がれ、応急処置らしきものがされているようだったが……その封印は完全ではなく、隙間からはしゅうしゅうと空気が漏れ出している。
 だが、既にその勢いも弱く、機体の内側が薄紫の空気に蝕まれるのは時間の問題だろう。
「ああ……」
 意識を集中し、太刀傷を覆うように結界を展開させる。
「……これでしばらくは何とかなるはずだ」
「助かるよ。早く戻ろう。……奉?」
 だが、千茅達がアレクを連れて走り出したというのに、奉の黒狐はその場に立ち尽くしたまま。
「すまん。その術、消耗が大きくてな。……気にせず置いていってくれ。そう保つ術じゃない」
 昌や千茅は一瞬、戸惑う様子を見せていたが……やがて、少しずつ奉との間を離し始める。
「柚那と半蔵も先に戻れ。多分、戻った後にひと騒ぎあるぞ」
 その言葉に小さく頷くと、馬廻衆の二人も先行の一団に合流すべく、その場を後にするのだった。

続劇

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