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20.戦姫出陣

「調整終了! 出られるよ!」
 そのひと言は、少女が待ちわびて待ちわびて、待ちわび抜いた言葉だった。
「やった! ククロ、ありがとう!」
「俺もすぐ出るよ! ソフィアはセタと先に出てて!」
 肩のククロが降りたのを確かめ、力強く一歩を踏み出す。
「まかせて! セタ、出られるわよね!」
 黒金の巨人から伝わる感覚にズレはない。仕上がりは完璧だ。
「もちろん。姫様のエスコート役が遅れちゃ、様にならないだろう?」
 傍らに並ぶ声に応じるのももどかしく、速度を上げて工廠を抜け、城門をくぐり抜ける。
「ハギア・ソピアー、出るよ!」
 視界を最大望遠にすれば、そこでは既に激しい戦いが始まっていた。
 意思のままに踏み込めば、黒金の騎士はソフィアのそれに従ってスピードを増していく。
「環! 『九本尻尾』はどこ!」
 通信機に怒鳴りつければ、怒鳴り返してくるのは指揮所に詰めた環の声だ。
「ソフィア! 奴はアレクが相手してる! お前は作戦通り、他の連中を助けて回れ!」
「やだ!」
 だが、下された命令を妹姫は速攻拒絶。
「やだって……!」
「アイツが一番強いんだよ! アイツを倒せば、後はみんな総崩れに出来るじゃないっ!」
 敵を倒すには、まず頭から。
 対人戦のセオリーが魔物達に通じるかどうかは分からなかったが、ボス格の『九本尻尾』を倒せば敵の戦力が大幅にダウンするのは間違いない。
 そうなれば、ソフィアもアレクも、他の敵をさらに倒して回る事が出来る。上手くいけば、この戦いに参戦した魔物全てを倒す事さえ出来るかもしれないのだ。
「いいんだよ! とにかく、お前は………」
「こっちだよ、姫様。リフィリア達から連絡があった」
 怒鳴りつけてくる環の通信を早々に切り上げて、ソフィアはセタの導くままに、黒金の騎士をさらに加速。
「邪魔……するなあああっ!」
 道を塞ごうとする魔物達の姿を目にし、ソフィアは黒金に輝く片手半を力強く振りかぶる。

続劇

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