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17.Guardian of Guardia

 暗闇の中に浮かび上がるのは、輝度を最低まで落とした計器の光。
「パワーバランス、エネルギー供給正常。システム、オールグリーン」
 正面に映し出されるのは、豪快に吹き飛んだ百五十メートルの巨大竜。
「重力緩衝、正常に動作。着地の衝撃、問題ありません」
 衝撃遮断のゲルを全身にまとわせて、操縦者の娘が見据えるのは正面だ。
「行けるな、ジョージ」
 操縦席の後ろには、補助パイロット用の席がある。
 そこで絶える事無くパネルの操作を行っているのは、彼女に古代兵の使い方を教えた教官のさらに恩師。
 即ち……彼女の、父親だ。
「出力の調整と配分は全部俺がやってやる。思いっきり行け!」
「はいっ!」
 残された時間はわずかしかない。
 その全てを有効に使い切るため、ジョージは操縦桿を踏み込むのだ。


「なに? これ全部、姫様狙い?」
 現れた黒い仮面のルード達に、あからさまに眉をしかめたのはミスティである。
「なんか色々あるらしいぞ」
 マハエも細かい事情はよく知らない。正確に言えば、あえて聞いていない。
 知っているのは、フィーヱ率いる仮面のルード達がノアの命を狙っているという事だけだ。
「やめてよね……。どーせカイルとかあたしとかに押しつけようと思って引っ張ってきたんでしょ」
 黒仮面達がじりじりと間合を詰める中、ミスティはそんな事などお構いなしにため息を吐くだけだ。
「マハエがしろって言った」
「ですね」
 一瞬で責任を押しつけて来たセリカやシャーロットに嫌な顔をしながらも、マハエはタイキ達と同じく自らの武器を既に構えている。
「……おまえらもそっちのがいいって言ったじゃねえか」
 だが、タイキの範囲魔法には準備時間が必要だし、この間合であれば詠唱完了よりも早く攻撃が来る。マハエのボウガンも、そう連射が効くものでは無い。
「同罪よ、同罪」
 近接特化の短剣を構える黒仮面達の顔の向きから推し量れば、狙っているのはノアではない。黒仮面の一人か二人ずつの組となり、まずは周囲から崩す構えなのだろう。
 先ほどの反省をふまえたのだとすれば、全くもって正しい判断と言える。
「ターニャ、全部落としてよ」
 迫る黒仮面達の技量を知らないからか、単に余裕があるだけなのか。
 ミスティの口調は、先ほどまでと寸分も変わらない。
「無茶言わないでよ。さすがにこの小さくて速いのを全部打ち落とすのは厳しいわ」
「じゃあ、小さくても速くなかったら全部打ち落とせるのね」
 苦笑いするターニャに、意地の悪い笑み一つ。
 次の瞬間。
 彼方の竜の咆哮が、戦闘開始の合図となった。


 攻城兵器を改造した巨大なボウガンが続けざまに放つのは、丸太ほどもある長大なボルト。
 さしもの巨大竜にとっても、その直撃は痛打となったのだろう。咆哮を上げるそれに構うことなく、十メートルの人型巨人は加速の脚を緩めない。
「ええなあれ! ヒャッホイしまくりやないの!」
「いいからお主も攻撃せい!」
 即座にネイヴァン達と合流し、猛然と巨大竜を攻撃し始めたそいつは……。
「古代兵……」
 ガディアで見つかった古代兵は、動力不足で長らく凍結されていたと聞いていた。だからこそ、ハートの女王が泰山竜育成の目くらましに作っていた魔晶石農場に、百もの魔晶石を発注したのではなかったか。
 百の魔晶石でもほんの僅かな駆動しか出来なかったそれが、今は泰山竜を圧倒する程の働きを見せている。
「……なるほど」
 思い当たる動力源は、たった一つ。
「リントの置き土産じゃよ。もっとも、あそこまで強い力を持つとは思うてもおらんかったが」
 律が時間稼ぎをするはずだ。
「なら、こちらもそろそろカタを付けさせてもらおう。コウ!」
 魔晶石を噛み砕いたディスの大剣を覆うのは、黒い光。
「分かってる、ディス姉!」
 そしてコウの剣を覆うのは、闇を照らす深紅の炎。


続劇

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