操縦席に組み込まれた通信機から。
あるいは、神獣を伝わって届くテレパスから。
「総員、進撃!」
響き渡るのは、声。
続くのは、鋼の騎士たちが歩き出す音であり、神の獣たちの咆哮である。
メガリ・エクリシアから。
八達嶺から。
出陣していくのは、互いの誇る戦闘兵器。
それは版図拡大の為の武力となり、薄紫の滅びの原野を踏破する為の足となり……異形の敵と戦うための、刃となる。
「姫様……姫様……っ!」
アームコートの着用者が。
神獣の駆り手が。
正規兵も、義勇兵も。
呟き、抱く想いは、誰もが同じ。
姫。
仕えるべき主であり、守るべき指導者であり、敬愛すべき平和への導き手であった彼女たち。
だが、既に彼女たちはいない。
卑劣な異形どもの罠に掛かり、和平の実現半ばで、若すぎるその命を散らしてしまったのだ。
「本作戦の目的は、いまだ清浄の地に置き去りにされた姫様のお体の回収である!」
整然と歩を進める彼らに届くのは、改めての作戦指示だった。
「だが、彼の地への侵入を阻もうとする敵との遭遇が想定される!」
既に幾度となく聞かされている内容だ。もはや一言一句まで覚えている。
「その場合の命令はただ一つ!」
けれど改めての言葉が、兵達にこの作戦がいかに重要で、かつ絶対に成功させねばならないものである事を認識させる。
「殲滅せよ!」
応と呟き、兵達はさらなる一歩を踏み出すのだ。
目指す先は清浄の地。
キングアーツではスミルナ・エクリシア。
神揚では北八楼と呼ばれる場所。
最初の決戦が始まるまで、あとわずかの時しかない。

第6回 前編
|