受け取った報告書を三枚ほどめくり、槍一郎は無言でそれを突き返した。 「……」 報告書と呼べるレベルの物ではない。データはまとまっていないし、理論の構築手順も支離滅裂だ。これなら、新入社員の方がまだまともな報告書を書く。 研究所でも気鋭の所員が書いた報告書だとは、到底思えない。 「恵……お前、しばらく休め」 イクル達が姿を消して、既に半月が過ぎていた。 「はあ……」 槍一郎の家からクロエを寄越しているから、食事はきちんと摂っているはずだ。なりは小さいが働き者のクロエが家事をサボるとも思えない。 だが、丁寧にアイロンが当てられたシャツと白衣を着ていても、恵はいつもの精彩を欠き、衰弱して見える。 「上には言っといてやるから。な?」 正直、これではいない方がマシだった。研究は停滞するどころか後退の兆しさえ見せているし、何よりこんな恵を見るのは辛すぎる。 「とにかく、あいつらが戻ってくるまで仕事には出んでいい。それが済んだら、報告書でも何でも受け取ってやる」 ため息を吐き、恵は玄関の鍵を開けた。 イクル達と暮らすようになってからは、鍵を開ける習慣など失っていたのを思い出す。ドアを叩いてひと声かければ、内側から元気良く迎え入れてくれる者がいたからだ。飛び付いてきた体は重く、抱きつかれた体は痛みを訴えたが、それすらも恵にとっては喜びの一つだった。 だが、今はそんなひとはいない。 誰もいない部屋の扉を開け、靴を脱げば……。 「おかえりなさーい」 その声と同時に薄暗い部屋からぱたぱたと駆けてくる赤いアンテナ。 「……イクル!?」 体が勝手に動き、思わずその姿を抱きしめた。 「あふ……」 「やっと……おかえり……」 柔らかい、小さなからだ。漏れる甘い声に愛しさがはじけ飛び、夢中で唇を重ね合わせた。 「ん……っ」 懐かしいイクルの唇。恵は逢えなかった時間を取り戻すように唇を舐め、唾液を吸い、歯を叩いて舌を絡め合わせた。イクルも最初はおどおどしていたが、いつもの優しさを見せる恵に安心したのか、やがて自分から唇を求めてくる。 わずかに離して息を吸い、さらにキス。玄関のマットの上にイクルの体を横たえ、ゆっくりと上に乗ってなおもイクルを責め続ける。 いつしか両手はイクルの胸へと伸び、柔らかくまさぐり始めた。シャツの中に手を伸ばし、いつもイクルが喜んでくれた、くすぐるような指使いで優しく嬲ってやる。そこで硬くなった乳首を爪で軽く弾いてやるのが、イクルの大のお気に入り。 「ぁ……はぁ……。ピンピンしちゃ……らめぇ……」 弾くたびに繋がった口の中に響く、愛しい喘ぎ声。上等な楽器を爪弾くように恵はイクルへの愛撫を堪能する。熱のこもった啼き声を、肺の奥まで吸い込んだ。 「んぁ……」 そんな中、ぬちゅ、という水音が響く。 「イクル……久しぶりだけど、いいかい?」 重なった恵の腹を濡らす、イクルの股間の音だ。久しぶりの再会で昂ぶっているのか、彼女の濡れ方もかなりのハイペース。彼女も寂しかったのだと知り、恵の心も高鳴った。可愛く乱れるイクルの声に、募る想いが加速する。 こんなに大切で、愛しいものだったのかと、想いが狂う。 「ん……はぁ……ぁ……」 服を脱ぐのももどかしい。ずり下げたスラックスとトランクスの間からペニスを取り出し、いきなりイクルの腰に押し付けた。先走る液を吐き出すそれを何度も何度もイクルのショーツになすりつける。 「にゃ……ひゃぁ……ぁ……っ」 熱くたぎるもので撫でられ、敏感な部分をこすりつけられた。今までに感じた事もない恵の荒々しい動きに、イクルは途切れ途切れの喘ぎを上げるだけ。 「イクル……イクルっ!」 やがてずれたショーツの間から、硬くなったそれを一気に押し込んだ。 「にゃぁぁぁぁぁぁぁァッ!」 響く、幼い声。恵の熱いたぎりを受け入れた膣は、いつにもなく彼を締め付ける。 白熱した恵の興奮はさらに加速し、腕の中でよがり乱れる赤いアンテナの少女をさらに激しく責め上げていく。 「にゃぁ……あつぃ……あついぃいぃ……。もっと……もっとしてぇ……」 いつにもなく甘ったるい声に答えるよう、恵の動きは大きく、激しくなっていく。入口近くまで引き抜き、猛烈な締め付けをみせる膣を貫いて根本まで一気に送り込む。抽挿で掻き出された泡の混じる愛液が、恵の嗜虐心をさらにかき立てる。 「なんか……なんかふわふわするよぅ……やぁ……なんか、なんかくるぅ……っ」 「イクル……イクルっ!」 イクルの膣の中、ペニスをぎゅっと押し潰すような圧を受け、青年はついに吼えた。 幼い娘のからだの中に、たまりにたまった粘つく精を存分に解き放っていく。 「はぁぁ……っ……。ゃぁ……すごい……すごいよぉ……」 今までに放った事もない程に大量のそれはイクルの中をすぐに満たす。ぷっくりと軽くふくらんだ腹からいまだ精を放つ男根を引き抜けば、腹の圧に負けて内の白濁がとろとろと流れ落ちる。 こぽりと精を吐き出す処を最後に飛び散る残滓でさらに穢しながら、恵は長く長く息。 「おかえり……イクル」 幸せそうに呟き、少女の赤い髪をそっと撫でようとして、 その黒髪に、凍り付いた。 「すごいよぅ……ますたぁ……」 アンテナの色は確かに赤。でも、髪の色は黒。暗がりの中では注意しなければ気付かない二つの色。 イクルそのままの姿よりいくぶん幼くみえるその少女は、恵をマスターと呼び…… 「……クロエ!? 何で、え?」 言ってからようやく気が付いた。 「ますたー、この格好したら、喜んでくれるかなって思って」 ブラックゲッターの外装に、いくつかのカラーパターンがあった事に。もともとイクルの外見をベースにしているのだから、外見色を赤くすればイクルと見間違えても不思議ではない。 「そりゃ、確かにイクルと間違えたけど……」 上気した頬でこちらをとろんと見つめているクロエを、呆然としながらもそっと撫でてやった。のぼった血も醒めて冷静になっている今なら、恵がイクルとクロエを間違える事はもうない。 「とりあえず、体を洗って、元の外装に戻そうか。クロエ」 「あい」 疲れた体を立ち上げて。鞄の代わり、二人の淫らな液に濡れたマットとクロエの手を引きながら、恵は風呂場へ向かうのだった。 |