「ごめんね……ごめんね……チヤカちゃん」 キスをしたまま、ヘルメットの少女はなおも泣きながら謝る。しゃくり上げながら、何度もそれを繰り返す。 差し込まれた舌の接続で、チヤカに秘められた想いを知ってしまったから。 「ミクマ……貴女、私の記憶を……!?」 彼女がメモリの最深部、プロテクトの底に隠していたデータを、見られてしまった。だが、頭をミクマに抑えられているチヤカは頬を染めたまま、身動き一つ出来ない。 「ごめん……でも……」 ミクマは、チヤカは初めから何でも出来るのだろうと思っていた。だからいつも完璧であろうとする彼女が苦手だった。 けれど、それは間違っていたのだ。チヤカが何でも出来るのは猛烈なシミュレートの成果。それこそCPUを焼き尽くすほどの努力のたまもの。そしてその完璧主義を支える想いが、まさか……自分達であろうとは。 「ごめん……。それから……大好きだよ、チヤカちゃん」 たまらなくなり、さらに唇を寄せる。 「もう……この子は……」 穏やかに笑い、チヤカも唇を重ねた。とろりと濡れたミクマの唇は甘く、快い。舌でそっと舐め取れば、恥ずかしげに閉じた唇がうっすらと隙間を空けた。 舌を伸ばす。 「ん……っ……んぁっ……」 「ミク……マぁ……ぅ」 コネクタである舌が絡み合い、二人の触覚を繋ぎ合わせた。二倍に増えた触感情報が娘達の思考を押し流し、行き交う快楽が乗数的に高ぶっていく。互いを思う愛しさが、電子の波に乗ってCPUを加熱させていく。 チヤカはミクマを愛で、ミクマはチヤカを愛おしむ。 (二人とも……ずるいよぅ……) と、聞こえぬその声と共に、二人の唇がぐっと離された。 「あ……」 互いが伸ばした舌の間に銀の橋が繋がり、少し糸を引いた後、ぷつりと切れる。 データリンク、ディスコネクト。 高速で行き交っていた快楽情報も、同時にぷつりと途絶える。 「イクルちゃん……仲間はずれにしちゃって、ごめんね」 うっとりとそう囁き、ミクマはチヤカの頭を自分の胸元へ。 「そう言うこと……もぅ。まったく、しょうがないんだから」 小さな胸に埋まったまま微笑し、黒髪の長女は赤い胸元に唇を触れさせた。膨らんでもいないそこをちろちろと舐め、末娘と二人で組み上げた快楽情報を込めた唾液を擦り込ませる。 びくりという胸の震えにくすくすと笑って、赤い表面情報の薄くなった箇所を重点的に舐めていく。ボディペイントを拭き取るように赤い服がそぎ落とされ、色素の薄い肌が少しずつ明らかになっていく。 (もっと……下ぁ……) 見れば、寝ころんだミクマのおへそのあたりに薄く汗が溜まっている。ゲッター3の時のイクルのフォーメーションを想像し、少し意地悪く笑う。 「イクル、この辺が気持ちいいのかしら?」 (ふぁぁっ!) 分離形態でいうイクルの口の辺り。ゲッター3でいえば汗の溜まった処へと、チヤカは顔を押し付ける。溜まった汗をすすり上げ、ぽっかりと開いたイクルの口を、一杯まで伸ばした舌で掻き回す。 イクルから流れ込む想いも、チヤカにとっては愛おしく、また愛らしい。 「もぅ。今度はイクルちゃんばっかり」 (ひあぁっ!) 重なる感触に、イクルは思わず悲鳴。口もとにチヤカの愛情を流し込まれるだけでも気が狂いそうなのに、片手を開けたミクマが伸びる腕を両方の胸に絡ませてきたのだ。 触手のような腕がイクルの体を這い回り、チヤカの唾液に濡れた小さな胸を連なるリングでふにふにと揉み上げる。 しかも、それを操っているのはロボットアームの本当の使い手で、さらに言えばイクルの感覚情報と直接繋がっている。 「ここが気持ちいいんでしょ?」 (ん……ちがっ……ぁっ!) ぷっくりと盛り上がった左右の乳首を一杯に伸ばした二本の指で同時につままれ、余った指でくにくにと押し込まれた。六本目の指があるのは、チヤカを抱えている手から伸ばしているからだ。 (やぁ……クリクリしちゃ……ダメぇ……っ!) 汗ばんだコネクタから直接データを送り込まれ、頭がオーバーヒートしそうになる。 「もっと気持ちいい所があるの? イクルちゃん」 (んぁ……はあぁぅっ……!) やがてイクルの脳内に、彼女自身のへそを舐めねぶる情報が伝わってきた。どうやらチヤカとリンクしてしまったらしい。もともとゲッター3の時のイクルはチヤカと繋がるはずだから、へそのコネクタで繋がってしまったのだろう。 (ああ……はぁうぅ……ぅ……ちやぁ……ちゃぁん……っ!) へそを舐められ、乳房を揉まれ、乳首をもてあそばれる。 勃ちしこった乳首をつまみ、弾き、伸ばした腕で自らの肢体を滑らかに拘束する。 悶える妹達の体を舌と言葉で陵辱し、快楽のデータを吸い上げる。 意識が共有され、混濁し、もう誰が自分を、自分を誰が犯しているのかすらも分からない。誰が誰なのかすらも、分からなくなっている。 ただ、互いを愛おしむ想いだけが躯を駆け巡り、回路を焼き尽くす。 「ちやちゃぁん……いく……るちゃん……ミクマぁ……」 ミクマの口はぱくぱくと宙を掻き、誰の物とも知れぬ声が流れ出す。 「すき……だい……すきぃ……」 やがて、小さな体は重なって崩れ落ち……。 「……で、そういうわけかい」 仲良く三つ並んだ止まり木に向けてそう言い、恵は頭を掻いた。 「ごめんなさぁい……」 「……すみませんでした」 「ごめんなさい」 三者三様の声が、次々と流れ出る。一つ共通しているのは、みんながしょぼくれた声という所か。 「合体失敗して崩れ落ちてるからさ……心配したんだよ?」 遅い昼食を食べようと台所から居間に戻ってみれば、三人が布団の上で絡み合うようにしてブラックアウトしていたのだ。慌てて彼女達の主電源を落とし、システムチェックをぶち込むこと三時間。 データの破損がないことを確認し、内部機構に問題がないことを完全に確認するまでにさらに二時間半。ようやく再起動のコマンドを入れて、今に至る。 「互いを好き合うのは僕も賛成だし、こういう事をしちゃダメとも言わないよ」 三機のアンドロイドをチェックするためにフル稼働させていたPCの電源を落とし、全開で運転させていた冷房も切りながら、言う。 「でも、壊れるような真似だけはしないって、約束してくれるかい?」 冷房を全力運転させていたというのに、部屋は全く寒くない。それだけPCが冷却を必要としていた……という事なのだろう。 だが、恵の顔は心なしか青ざめたまま。 「はぁい」 しょぼん、と頭を下げ、三人の娘は力なく返事。 「さて、と……」 ぱんと軽く手を打つと、恵は話題を変えた。 「誰か、何か作ってくれないかな? あとそこを片付けなきゃ……」 もう日も沈んでいるというのに、朝食の後から何も食べていないのだ。おまけに昼食の予定だった野菜炒めも、いまだ部屋の隅に放り捨てられたまま放置されている。 「では、私が!」 もちろん、名乗り出たのはチヤカしかいない。 「異論はありませんわね、二人とも」 「うん!」 「OK!」 「じゃ、行きますわよ。オープンゲット!」 ふわりと止まり木を飛び立ったチヤカに、ミクマが連なる。チヤカはミクマが繋がれるよう、いつもより気持ち遅めに。ミクマは今度こそチヤカを傷つけないよう、いつもよりも落ち着いて。 「チェンジ!」 機体後部のスリットに唇を重ね、舌を伸ばして変形の情報を受け取る。 「チェンジ!」 ずん、とミクマの後に伝わってきたのは、心強いイクルの感触。チヤカから受け取っておいた彼女の分の合体情報を送り出せば、元気一杯に受信信号が返ってきた。 その元気に後押しされ、ミクマはチヤカに接続完了のコールを送り出す。 「チェーンジ!」 気弱なミクマに、完璧主義なチヤカへのわだかまりはもうない。 あるのは絶対の信頼と、ひたすらな愛しさ。ミクマの優しさを信じてくれるチヤカに体の全てを任せ、想いの全てを託す。 三つの意志が重なった。 チヤカの額に小さな角状のパーツが初めて現れ、完成のサインを示す。 「ゲッター2!」 右手にハサミ、左手にドリル。不自由なはずなのに、チヤカに掛かれば変幻自在のマジックハンドとなる、両の腕。 無限の努力の果てに得た、魔法の両手。 「ご主人様。イクルとミクマの提案ですけれど……何でもいいからさっさと出来るメニューで、構いませんか?」 努力の影は微塵も見せず、チヤカは愛しい主に微笑みかけるのだった。 |